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不合格をおかげに変換【金光新聞】

入院してください と言われ

 受験シーズンになると私(53)の脳裏には、三十数年前の大学入試のことが、母の信心の思い出としてよみがえってきます。一浪していた私は、これが最後の受験のつもりで試験勉強にラストスパートをかけていました。【金光新聞】

 そんな12月の中旬のこと、妙に体が疲れやすく何かおかしいと思っていたら、尿や目の白目部分が黄色くなっていたのです。慌てて病院へ行き診察してもらうと、医師から「肝炎です。黄疸(おうだん)も出てかなり病状が悪いので、入院してください」と言われました。私は、頭の中が真っ白になりました。どれくらいの入院が必要かを尋ねると、「3カ月ぐらいは考えておいてください」と言われました。

 「それでは入試が受けられなくなる。どうでも神様に治してもらおう」。そう決心し、入院しない旨を医師に伝えて病院を後にしました。私は、一浪してからずっと、金光教の教会へ毎朝5時半に参拝し、「元気で入試が受けられますように、合格できますように」とお願いしていたのです。

 その夜、私は家族に病状を説明し、「明日からあらためて、神様に1カ月で治してもらうよう、朝参りをしてお願いする」と告げました。家族も「そう決めたのなら、私たちもお願いさせて頂く」と言ってくれ、低血圧で朝起きの苦手な母も一緒に朝参りをしてくれることになりました。

母の言葉と行動が、「不合格」を「おかげ」にしてくれた

 そうして新年を迎えても一向に黄疸は取れず、尿も黄色いままでした。それまでも病気ではおかげを頂いてきましたが、「今度はあかんのかな」と不安が頭をもたげ始めた1月下旬ごろから体が楽になり、黄疸も取れ尿も元通りになりました。

 こうして、願い通りに病気が治り、ありがたい気持ちで自信を持って受けた入試でしたが、私立大学はすべて不合格でした。でも、私は不思議と落ち込むことも焦ることもなく、「行く大学は一つでいいのだから、きっと国立大学におかげを頂けるのだ」という気持ちでした。

 神様は、医師に3カ月かかるといわれた病気を、入試に間に合うように1カ月で治してくださったのだから、大学も合格のおかげを頂けると信じ切っていたのです。

 3月下旬になり、国立大学の発表がありました。しかし、そこに私の番号はありませんでした。半ばぼうぜん自失の状態で、近くの公衆電話から母に結果を知らせると、「早く帰ってきなさい」という言葉が返ってきました。家に着くまでの一時間ほどの間も、頭の中は「どうして?なんで?」という思いでいっぱいでした。

 家のドアを開けると、母が外出着で待っていました。開口一番、「神様が不合格のおかげを下さったのだから、今から教会へお礼参拝するから来なさい」と言いました。しかも母は、入学金として用意していたお金を、お礼にと全額お供えしたのでした。

 当時、私には母の行動に納得できないものがありましたが、もしあの時、母が、「神様はおかげを下さらなかったね」と言っていたら、その後の人生はどうなっていただろうと思うことがあります。たった一つの言葉や行動が、その人の人生を大きく変えることになるのです。

 その後、私は金光教の教師となり、布教に出ました。母のあの時の言葉と行動が、「不合格」を人生の上の「おかげ」にしてくれたと、今になるほどありがたく感じています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2009/01/22 10:28:23.131 GMT+9



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