title.jpg

HOME › 青少年活動期間に当たって

青少年活動期間に当たって

「ぼくは、『生かされて生きる』というような消極的な生き方はしたくありません。だれにも頼らず、自分の力で生きていきます」
 これは本教関係の高等学校生徒による入学直後の感想文で、昨年、本部で開催された教師セミナーで紹介されたものだ。本教関係校とはいえ、そのほとんどが未信奉者家庭の子どもたちなので、近年は、こういうことを堂々と言う生徒が増えてきたという。
 戦後日本の教育では、教育現場で宗教的なことが扱われなくなり、そういう環境の小学校、中学校で育った子どもたちが高校へ進学してくる。また、いわゆる団塊の世代と呼ばれる人たち以降に顕在化した宗教離れは、急速に広がって、次の世代になると、宗教の儀礼や慣習はもちろん、宗教への知識や関心もなくなっている。
 そのため、今の子どもたちは、親から天地自然の恵みや神様のことを聞いたことがなく、自分で天地とか神様のことを感じたり、考えることもない。そういう世代の親と子が確実に増えてきており、それが先の感想文ともなって表れているということであった。
 ちなみに、本教関係校の生徒は、私学に認められた宗教という授業をとおして、天地の恵み、神様のこと、お世話になっての自分ということを少しずつ感じ、考えていくようになる。とはいえ、その大切さは容易に理解されず、多くの親と子から受験に関係のない授業として疎まれているのが現実であるという。
 このような現場の声に出合わされてみて、宗教離れが進む現代社会の実際に驚かされる。と同時に、あらためて現代の子どもたちを取り巻く環境の厳しさを思わせられるが、『日本のこころの教育』(境野勝悟著)には、その宗教離れにかかわる興味深い話が掲載されている。
 それによると、日本人には古来からの太陽神信仰が伝統的に深く根付いており、その信仰が日常的なあいさつのなかに織り込まれていた。すなわち、私たちは人に出会って、「こんにちは、お元気ですか」と呼びかける。この「こんにちは」は、「今日様」が語源で、太陽、お日様のことを指している。お日様のお徳のなかに生かされているお互いが出会ったのだから、「やあ、太陽さん」という意味を込めての「こんにちは」であった。続く「お元気ですか」の「元気」は、元の気と書いて、太陽のエネルギーを指している。「お日様のエネルギーを頂いて、明るく生きていますか」という意味での「お元気ですか」であった。
 これに対して、「はい、おかげさまで」と答える。これは文字どおり、お日様のエネルギーを頂いての「おかげさま」であった。そうして最後に、「さようなら、ご機嫌よう」となるが、お日様のお徳のなかに生かされているお互いが出会い、そのお徳のおかげで元気にしていることを確認し合ったので、「さようでござりますれば(そういうことであるなら)安心ですね、ご機嫌よう」と言って別れていたという。
 こうした一連のあいさつは、現代も日本人としてごく普通に行われているが、かつてはお日様のお徳を身に受けてのお互いということを確認するあいさつだったのである。「天の恩を知りて、地の恩を知らぬこと」との教祖様のみ教えがあるが、当時の日本人は、確かに天の恩を知っていたということになる。それがいつの間にか、地の恩はもとより、天の恩も忘れてしまい、そのなかでの現代の宗教離れでもあると理解されよう。
 次に紹介するのは、四代金光様のお歌をもとにした、ある先輩教師の教話の一節である。 
 <…「喜怒哀楽先にはあらず賜びし命ありてめざめて後のことなり」と。喜怒哀楽というのは、神様から頂いた命というものがあり、お目覚めを頂いて、それから後のことなんだと。頂いている命ということと、目が覚めるということ、その働きのなかで喜怒哀楽というものがあるのだとおっしゃっている。この順序を間違えないようにということを、絶えずご理解くださっているのである。ところが、現代では、神様のお恵みやお徳を感じることが乏しくなってきて、命あっての私というのが本来であるのに、私が命を自分勝手に取り込んでしまい、わが自由になるものと思いなしている。…>
 ここでは、「賜びし命」という深い信仰的洞察をもとに、天地に根差した私の命であり、その命あっての私の喜怒哀楽の人生なのだと語りかけられ、そのうえで、天地のお恵みや神様のご領分というものを認めようとしない現代人の問題が指摘されている。冒頭の感想文に代表される子どもたちのことを思う時、この教話のように、この道の信心をもって私たちの命や人生の根源にかかわる天地や神様のことを、子どもたちに語りかけていくこと。そのことが、われわれ信奉者の大切な信心実践として求められているように思われる。
 青少年活動期間を迎えて、共々に周囲の子どもたちに、天地のことや神様のありがたいことを、少しでも語り伝えていくお役に立たせていただきたい。

メディア 文字 

投稿日時:2010/03/01 11:50:43.147 GMT+9



このページの先頭へ