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絵に浮かび出た心の影【金光新聞】

「この木は今のあなた自身なんですよ」

 20代のころに描いた一本の木の絵が、今でも私の心に残っています。それは、私が人間関係のこじれから精神的なバランスを崩していた時に、初老の女性心理カウンセラーのもとで描いたものです。
 当時、私は何を支えにどう生きていけばいいのか分からなくなっていました。金光教の信心に縁を得ていたものの、それを信じることもできませんでした。そんな私を心配した友人を通して、そのカウンセラーの先生と出会いました。
 ある日、先生は私に、「木の絵を描いてみてください。どんな木でも構いませんから」と言いました。そう言われて、私の胸は躍りました。というのも、絵を描くことは子どものころから得意としていて、イラストや似顔絵を描いては喜ばれていたからです。

 私は鉛筆を走らせて、一本の木を描き上げました。時間に限りはありましたが、自分に満足がいくように、光と影の濃淡をしっかりつけて、好みの構図と印象になるように何度もなぞるようにして仕上げたのです。
 その絵を手に取って、じっと見詰める先生の言葉を私は待ちました。きっと褒めてくれるだろうと期待をしていたのです。ところが、返ってきたのは実に意外な言葉でした。
 「あなた、絵がとても上手ね。でもこの幹は、ここから大きく二つに分かれている。これは真っすぐに生きていけなくて迷っているからじゃないかしら。枝も決して多くはないし葉も少ない。根も深く張っているようには見えないし。果実を描く人だっているのに、あなたの木には花も咲いていない。影をくっきりとさせているのは心に深い影があるからです。この木は今のあなた自身なんですよ」

自分の生き方を変えていこう

 その言葉に、私はがくぜんとしました。そんな指摘をされるとは思いもしませんでした。しかし、それはあまりに的を射ていました。これまで隠し通してきたものが白日の下にさらされたショックに打ちのめされ、不覚にも泣き崩れてしまいました。
 この私の反応は、先生にとっても予想外のことだったようでした。私が落ち着くのを見て、「あなたの中で絡まって身動きが取れなくなってしまったものを、一つ一つ整理していきましょう。これから立派な花や実がつくようにしていきましょうね」と、優しく声を掛けてくれました。
 「こんなことがあるなんて」。私の中のそれまでの物の見方が崩れていくのを感じながら、実りのある豊かな木のような人間になりたいという思いが、心の奥から湧き上がってきました。
 私は独善的に理想の自分を求め、親や信仰への不信感を募らせ、もがき続けていたのです。この出来事からそのことに気付き、自分の生き方を変えていこうと努めました。そうして、時間はかかりましたが、この道の信心へと回帰していきました。

 「木のもとへ肥をやれば、枝振りまで栄える。ご先祖や親を大切にすれば繁盛させてくださる」。教祖様は実りある人生について、枝振りのいい、大地に深く根を張った木々の成長に例えて、こう教えてくださっています。
 あのカウンセラーの先生との出会いは、今にも枯れかけていた当時の私を助けるために、神様が引き合わせ、その後の人生を切り開いてくださった神導きの体験として、今も心の中で大切にしています。
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2013/08/19 16:40:15.898 GMT+9



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