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平和を祈る

金光教報 『天地』 8月号巻頭言

 今年も七月に、東京、広島、山口、長崎で、平和を祈る集会が開催された。集会の成り立ちや歩みに違いはあるが、根底に流れるものは「世界真の平和」を願ってのものであり、その実現に向けて取り組みがなされている。
 明治元年、教祖様は親神様からのよざしのままに、「天下太平、諸国成就祈念、総氏子身上安全の幟染めて立て、日々祈念いたし」との願いを込められた。その願いを受け継がれて、歴代金光様をはじめ、直信先覚先師もまた、その時代時代に祈りを込められた。とりわけ、多くの犠牲者が出た第二次世界大戦時に、三代金光様のみ祈りは日々切なるものであったと拝する。
 そうした苦難の時代を経て、昭和二十一年十月の本部大祭の折、三代金光様はご諭告で、「新日本の再建、天下総氏子の安全、世界真の平和実現の為に一路邁進して、我が立教の使命達成の大御蔭を蒙ることの出来ますよう、切願の至りに堪えませぬ」と、荒廃したなかにあって新日本再建に向け、さらには世界真の平和実現を切に願われて、お言葉を発しておられる。
 そうしたみ心を受けて、先師たちは荒れ野となった大地にひれ伏し、祈りつつ復興の歩みを続け、戦争の時代のなか、戦後の厳しい現実のなか、いかにすれば神様のみ心にかなう真の平和となりうるのかを求め続けられた。
 ある師は、原爆投下により教会が全焼し、どのように復興していけばよいかの当てもなく、先の不安を抱えながら、実家でもある親教会に戻った。しばらくは教会に身を置き、被爆した夫人の健康回復に努めてと思った師に、祖母である師匠から、「一人の信者さんでも生き残っておるとすれば、その氏子のために願い、一時も早く教会復興させていただかねばならん。また、あれだけたくさんの霊(みたま)様ができたのだから、霊祭(みたままつり)を放っておくことはできまい。早く行け」と言われた。師は、「七十五年間は草木も生えないといわれる原爆荒野へ帰って、やっていく何一つも持ち合わせていない。どう考えても、手も足も出ないような気がするが、あのように仰せなされるのは先生の思いだけではない。神様がそうおぼしめされ、ご霊神たちも待っておられるのだろう。物がなくとも、力がなくとも、そうさせていただこう」と決心し、お取次を願われた。当座の物を持って身一つで教会跡地に赴いたが、そこには当然のことながら建物はなかった。寝ころんで夜空の星を仰ぎ見た時、「天地は生きている。われも共に生きん」と心新たにし、翌日から整地とバラック建設に取りかかった。
 その後、まさに天地と共に生きんとの思いで歩みを続けた師は、そのなかをとおして実感された思いを次のように語っている。
 「幸い、祖母の強い祈りに導かれ、あの原爆の時、私ども人間と共に神様も被災なされて、われわれの苦しみのなかに、共に飛び込んでくださる。そして、今現在も、共に苦しんでくださり、立ち上がろうとしてくださる。常にお守りくださることを実感させていただきました。それからの生活は、ようも通ってこられたものだというものでした。『神様と共にあるんだ。神様は今、私と共に苦しんでくださっている』と思わせていただきながら、自分を支えてきたようなことです」
 人や物を当てにしてしまいそうな思いを、神様に向け、すがり、神様と共に歩み続けたうえでの師の実感であり、そこにはどのような困難のなかにも、常に私たちに寄り添い、難儀や苦しみを助けてやりたいとの親神様のみ思いが確かに伝わってくる。そして、そのような思いを誰もが二度と味わうことのないようにと、平和を祈る営みを続けていかれたのである。
 こうした先師たちの思いを忘れず、絶やさず、時代社会が移り変わり、平和を脅かす事態に遭うなかにも、本教の信心の眼差しをもって平和を希求し、「あいよかけよで助かり立ち行く」この道のあり方を求め祈り続けてきての今日がある。
 四代金光様は、お歌をとおして、世界のさまざまな難儀に目を向けられ、神心をもって見つめられ、どのような信心になれば助かるのかを求め続けておられた。
 「争ひより平和をよしと思ひ選ぶこころ人皆もちゐるものを」
 「世話になるすべてに礼をいふこころ平和生み出すこころといはん」
 「忘れてはならぬことなり今をある平和への尊き尊き犠牲」
 誰の心にも、争いより平和がよいと選ぶ神心があり、そうした心が生み出されてくるには、世話になるすべてにお礼を言うようになることであり、忘れてはならないことは、幾多の尊いいのちの犠牲のうえに築かれた今ある平和であるということを、お示しくださっている。
 私どもは、あらためて現教主金光様がお示しくださっている「世界の平和と人類の助かり」のために、手元のところから何ができるのかを求め、平和への祈りをより確かなものとしていきたいものである。

投稿日時:2014/08/05 08:56:44.146 GMT+9



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