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金光教さんは他と違う【金光新聞】

有志支援団を結成し、復興のお手伝い

 5年前の平成23年3月11日(金光新聞掲載当時)。私(58)は東日本大震災の惨状をテレビで目の当たりにした途端、16年前のことが思い出され、それより先はテレビを見られませんでした。
 阪神淡路大震災で全壊被害を受けた私は、当時金光教の教師仲間と有志支援団を結成し、復興のお手伝いをさせて頂いたことがあります。
 それは神様の願いである「人が助かる」ご用に使って頂きたいという思いからです。そして師匠から頂いた、「祈り祈りて我(が)を砕き神願に生く」の言葉に支えられての活動でした。
 そうしたことを思い出しながら、私は、東日本大震災から4ヶ月たった7月にボランティア隊に加わることができ、岡山県にある金光教本部から、14時間かけてバスで東北へ移動し、10日間被災地に滞在しました。

 到着後、私たちは、まず津波の被害を受けた地域で、ある住宅の床下の泥をかき出す作業をさせて頂きました。震災前、そのお宅の隣ではクッキー店も営んでいたそうです。幸いにも、家の向かいに大きな病院があったため、家は流されずに済んだということでした。
 その家の奥さんは、毎日避難所から通ってきては私たちにお茶を出してくれましたが、特にお話しすることはありませんでした。ところが最後の作業の日、奥さんが初めて私に話し掛けてきたのです。
 「実は、宗教関係の方なので警戒していたんです。実家の父からも、後から寄付を募ってくるかもしれないから気を付けるようにと言われていました」と、打ち明けてくれました。世の中の人々の宗教を見る目はいまだ厳しく、残念なことですが仕方がないことだと思いました。
 しかし、その方は「けれど金光教さんは違う。こんなに懇切丁寧にしてくれて。私がしているのだという顔もせず黙ってこつこつとされて。服装などにも『金光教』の文字が一つも無い。金光教さんは素晴らしい!」と、言ったのです。


前を向いて歩かれますように

 それから私は、自分が体験した阪神淡路大震災の時の話などを交えて、最後にこのような話をしました。
 「『四』というのは『良かれ』の『よ』なんです。人間は、すぐに悪い方に取ってしまいますが、『四』は、『死ぬ』の『し』ではなく、始終幸せの『し』です。だから金光教では、あえてかしわ手を4回打つのです。あなたには家も命も残っています。ゼロではありません。前を向いて歩きましょう。後ろ向きに歩いたらこけてしまいます」
 すると、話し始めたころより元気を取り戻した様子で、「そうですね。あなたのおっしゃる通りです。前を向いて歩くしかないですね」と、言ってくれました。私は、「そうです。昨日を忘れ、今日を喜び、明日を楽しみに生きましょう。家の床下はこんなにきれいになりました。後は大工さんが元通り、いや、それ以上にきれいにしてくれますよ」と、祈りを込めて励ましました。

 9月、2度目の被災地入りをした私は、その家のことが気になり、さっそく見に行きました。すると、家にはきれいなフローリングが敷き詰められていて、クッキー店も再開していました。生活が動きだし、少しずつ復興が進んでいることを感じ、何だかうれしくなりました。
 私は、「被災地の方々が前を向いて歩かれますように」と、手を合わせずにはいられませんでした。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」金光新聞2016年3月6日号掲載)

メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2018/03/20 10:00:00.000 GMT+9



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