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日参を約束できますか【金光新聞】

「先生、やめさせてください」

 私がご用する教会に参拝している直子さん(32)は、4年前に結婚し、3人の子を育てる元気いっぱいの女性です。しかし、現在に至る道のりは平たんなものではありませんでした。
 中学生の時にいじめが原因で不登校になった時には、直子さんの祖母が熱心に教会にお参りされていた縁で、教会で宿題を見てあげたこともあります。高校卒業後、就職のため実家を離れたのですが、5年後に経営不振を理由に、リストラされてしまったのです。次の仕事も見つからず、両親にその事実を打ち明けることができない中で、次第に素行の悪い友人と遊ぶようになり、ついには両親とも連絡がつかなくなってしまいました。
 直子さんの身を案じた両親は、2人そろって教会にお参りし、お結界で、娘が無事に帰宅するようにと、お届けされました。その後、一緒にご祈念をさせて頂き、私も同行して警察に捜索願いを出しました。

 それから半年後、直子さんの居場所が分かり、家に帰ってきました。そして、両親に連れられてお参りしてきたのですが、顔を前髪で隠し、お結界でも一度も顔を上げません。帰り際、昔の面影が全く消えてしまった彼女に、「こんなに痩せて。苦労したね」と、声を掛けながら背中をとんとんせずにはいられませんでした。すると直子さんは、初めて私の顔を横目で見てくれたのです。その時、私は一筋の光が差したような気がしました。
 しばらくして、両親から「直子が隣町のパチンコ店で働きたいと言います。また、悪い友達と関わるようになるかもしれません。先生、やめさせてください」とお届けがありました。ようやく家に戻ってきたとはいえ、まだまだ精神的に不安定だったこともあり、両親が心配するのも無理はありません。その夜、私は教会長と共に、直子さん一家の立ち行きを一心に祈りました。

欠かさなかったお参り

 次の日、両親に連れられて直子さんがお参りしてきました。お結界で教会長が、「働きたいという気持ちが起こったことはありがたいことです。しっかりそのことにお礼を申し、神様におすがりし、神様の氏子として働かせて頂くという気持ちが大切。パチンコ店は、娯楽の場でもあるけれど、欲が集まる場でもあります。どうすれば、お客さまが心からリフレッシュしてくれるのか、求め求め、働くことが大切だと思います。そのためにも、毎日教会にお参りしてお届けすることが大切です。日参を約束できますか?」と尋ねると、直子さんは間髪入れずに、「はい、お参りします」と返事をしてくれました。
 そこで、面接を受けたところ、心の安定のためにも教会に通うことを条件に、採用が決まったのです。家から職場まで30分のところ、教会を経由すると50分かかります。遠回りになるのですが、約2年半の間、直子さんは仕事帰りに欠かさずお参りし、お結界で一日のお礼をしていました。楽しく働いている様子に、両親の心配が杞憂(きゆう)に終わったことを、お礼申さずにはおれませんでした。

 それから間もなくして、直子さんが一人の男性を教会に連れてきました。彼はお店のお客さんで、直子さんに一目ぼれしたそうです。金光教とは縁の無かったその彼と結婚し、日々信心継承を願い、子どもたちと一緒にお参りを続けている直子さん。来年の春には、もう1人家族が増える予定です。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

「心に届く信心真話」2019年11月24日号掲載
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2020/12/25 16:00:13.743 GMT+9



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