title.jpg

HOME › 家庭で楽しく信心の話【金光新聞】

家庭で楽しく信心の話【金光新聞】

お届けの練習をしなきゃ

 私(77)は九州にある金光教の教会で生まれ育ちましたが、父を早くに亡くし、母と二人暮らしでした。父の後を受けて教会長となった母は、経済的に余裕がない中でも、岡山県にある金光教本部への毎月の参拝を欠かしたことはありませんでした。
 当時、教会とご本部を往復するのに3日かかりました。その間、幼い私は叔母と教会で留守番をするのが常で、一生懸命交通費を工面して参拝する母の気持ちは、不思議で仕方がありませんでした。母はそんな私に対して、「こうしてお参りするから、あんたにも学校の教科書を買ってあげられるんよ」と言っては、本部広前のお結界でお届けした際に、金光様から頂いたお言葉を毎回うれしそうに話してくれました。
 そんな幼少期を過ごした私でしたが、結婚してからは、母とは別に、年3回は妻と4人の子どもと一緒にご本部に参拝するようになりました。

 30年ほど前、車でご本部に参拝していた道中のことです。いつもは私が一家を代表して金光様にお届けをしていましたが、運転をしながら、ふと「今日は、めいめいでお届けをさせてもらおう」と思い付き、そのことを子どもたちに伝えました。
 恥ずかしがって嫌がるかもしれないと思ったのですが、小学6年生の長男が、「じゃあ、お届けの練習をしなきゃ。金光様の役になって」と小学2年生の三女に言うと、「うん、いいよ」と返事をしています。私と助手席にいる妻は、「練習って、どんなことをするんだろう」と、ドキドキしながら成り行きを見守ることにしました。
 「今日は元気にお参りができて、ありがとうございます」と、長男が金光様役の三女にお届けすると、三女は「よう、お参りでした」と金光様そっくりの言い方で答えたのです。それを聞いた瞬間、私と妻は吹き出してしまいました。それでも、長男は続けて「今度、小学校を卒業します。6年間ありがとうございました」と言うと、「それはよかったのう」と三女は再び返事をし、「4月からは中学生です。また元気に頑張らせてください」と長男が言い、「はい、結構でした」と応じて終わりました。
 今度は長男が金光様の役になり、三女がお届けを始めました。「私は、来月から3年生になります」と三女が言うと、長男が「続いておかげを受けましょう」と、即座に答えました。お互いが金光様の口調をまねて間髪入れずに答える様子に、驚いてしまいました。

教えてできることではないぞ

 その後、ご本部に到着して、私はお結界で金光様に、この出来事をお伝えしたところ、金光様は大きな声でお笑いになり、「それは教えてできることではないぞ。いつも親が話しているのを聞いておるからじゃ」とおっしゃってくださいました。
 思い起こせば、母も私たち夫婦も、ご本部参拝から帰ると、金光様から頂いたお言葉のことを、食事中よく話していました。そんな大人同士の会話を、子どもながらに聞いていたのでしょう。

 現在、その子どもたちも結婚し、それぞれ家庭を持って信心を進めていますが、今でもその頃のことを思い出しては楽しく語り合うことがよくあります。
 信心継承というと、難しいことのように感じるかもしれませんが、日常、楽しそうに信心話をする大人たちの姿を子どもに見せていくことが、大切な一歩なのだとつくづく思うのです。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

「心に届く信心真話」2020年2月2日号掲載
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2021/04/28 11:47:47.709 GMT+9



このページの先頭へ