教務総長　西川 良典 （大阪府・藤井寺教会）

「あなたのおかげで」　平成30年ラジオ年頭放送

　皆様、新年おめでとうございます。ともどもに平成30年の新春を迎えさせていただきましたこと、心よりお慶び申し上げます。
　ことわざに「1日の計は朝にあり、1年の計は元旦にあり」とあります。これは、「その日にやろうと思うことは朝に計画を立て、その年にやろうとすることは元旦に計画を立てるように、何事もはじめに目標に向かって計画を立てることが大切である」という意味になろうかと思います。新しい年を迎えて、改めて「今年こそは」と目標を立て、日々の営みの中に、願いを新たに取り組みを始めることは、心引き締まる思いがいたす、大切なことだと思います。
　しかし、忘れてはいけないことがあります。それは、何に取り組むにしても、すべては、普段の生活の上に成り立っているということであります。食事を摂るにしても、仕事をするにしても、全て他の人の助けがあるからできるのです。そのことに気づくことで「ありがたい」という心が生まれてくるのです。
　人は誰もが、健康でお金があって、物に恵まれた生活をしたいと願うわけでありますが、そうであればあるほど、そうしたものに対するお仕えの仕方をまちがえないようにさせていただかなければなりません。
　たとえば、わたしたちの体の場合ですと、自分の欲望を満たすために、好きなだけ食べ、好きなだけ飲んでしまうという、「我食い」「我飲み」をしています。体の痛みや苦しみなど、考えたことがあるでしょうか。よくよく考えてみますと、神様が健康な体をお与えくださっているのに、自分の体、自分の力、自分の甲斐性のように思って、さんざんな目に遭わせてきた自分であった、ということが分かってきます。これは体ばかりではございません。商売をさせて頂く場合でも同じであります。
　先日、住宅販売会社にお勤めになっている人が教会に参ってこられました。その人は、最近、家が売れなくて、困っておられ「こんにちの販売不振は景気の問題ともからんでおり、なかなか家が売れません。そこで、なんとかおかげをいただきたいのです」と言われましたので、私はその人に申し上げました。
　「あなたは家を売りたいと思っておられるのでしょうが、建て売りの新しい家であろうが、今あなたが住んでいる古い家であろうが、同じ家である以上、いわば親戚のようなものでありますから、まず、今、あなたが住んでいる家にお礼を申してください。家を形づくっている材木は、天地の中で何十年もかかって育てられて大きくなったものです。そして、家の用材として切られ、切り刻まれて、家になっているのです。その間、どんなに辛抱をしてくださったことであろうかと、それらの木の身になって、家の身になって、こんにちまで住まわせてもらっている家にお礼を申し上げてください。もし、あなたが家へのお礼ができていないのであれば、『これまでお粗末ご無礼を重ねておりますが、お許しくださいませ』と言って、家に対して真剣におわびを言ってください。そして、その上で、『どうぞ、分譲地のそれぞれの家にご都合のよい方をお差し向けくださいませ』と一心にお願いしてください。そうすれば、天地の親神様はあなたの姿をご覧になって、必ず家を買ってくださる方を差し向けてくださいます」と、このように、家の販売をさせていただく心構えを申し上げました。
　家の販売というのは、なかなか契約が成り立たないと言われておりましたが、ありがたいことに、その方は、それから2ヶ月経ってから、2件の契約が取れるというおかげを受けられました。真心をもって、家の身になってお礼を申し上げ、お願いしていくことがいかに大切であるか、実証されたように思います。そういうことをとんと抜きにして、商売の繁盛のみをお願いしても、ものは売れるはずがありません。それは、天地の理にかなった生き方になっていないからです。
　お世話になる物にお礼を申すことは、商売だけに限りません。朝、目が覚めてからのことを考えてみましても、お水にお世話になり、食べ物にお世話になり、あるいはトイレにお世話になっています。それらの物に、果たして、「あなたのおかげで」と、お世話になる物の身になって、お礼を言ったことがあるでしょうか。
　神様はわたしたちのために、どんなお気持ちでそれらの物をお作りくださったことであろうか。そのように考えてみますと、神様だからこそようもようもお許しくださって、わたしたちを生かしてくださっているのだ、本当に申し訳ない、相済まない、なんというご恩知らずの自分であったかということが、ひしひしと心に響いてきます。
　お世話になるすべての物に対して、その物の身になって、ありがとうございました、と心からお礼を申し上げる。そういう生き方になりましたら、この天地の中で立ち行かないはずはありません。
　日々の生活は、すべて親神様のふところの中で、神様のお恵みをいただいてのことであります。ですから、こちらが、物をいとおしむ心や、お礼を言う心などをしっかり持たせていただいて、生活を刻んでおりましたら、五年十年向こうには必ず、「思ってもみなかったこんなおかげをいただきました」ということになってくるわけです。こんにち、ただ今の中に、そのようなおかげの芽が潜んでいるわけでありますから、その芽が育つように、神様に心を向けた生活を大切にしていきたいものと念願しております。
　どうぞ、皆様にとりまして、今年がよい年になりますように、お祈り申し上げます。