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「こんばんは」は神の言【金光新聞】

無事を願う気持ち

 それは20年ほど前のことでした。
 良子さん(当時38)が家の門の開き戸を閉める時間になると、茶髪にピアス姿の十代の若者たちが、道路をふさぐようにたむろしていたのです。彼らは日が暮れると暴走族と化し、爆音を立てながらバイクで高速道路に向かいました。【金光新聞】
 ある日、良子さんの自宅の向かいに住む、そのグループのリーダー格の母親が、良子さんに話し掛けてきました。
 「いつも息子が迷惑を掛けて、ごめんなさいね」。申し訳なさそうに、そう言う彼女に良子さんは、「いいえ、あの子らが道路に居てくれるおかげで、泥棒も入りづらくなるから、ありがたいのよ」と応えました。
 良子さんは、その地域で空き巣が多発していたことを引き合いに出してそう言ったのでした。母親は、「ありがとう。そう言ってもらえると気が楽になるわ。でも、あの子たちがけがをしないか、毎日心配でたまらなくて…」と、不安そうに言いました。
 良子さんは、その母親と以前から近所付き合いがあったことや、良子さん自身三人の男の子を持つ親として、わが子の無事を願う気持ちが人ごととは思えなかったのです。

 それからというもの、良子さんは毎日、彼らの無事を心中で祈りながら、門の開き戸を閉める時に「こんばんは」と、声を掛け始めたのです。
 最初は、良子さんがあいさつをしても、にらみ返されるだけでした。それでも、良子さんが毎日、同じ時刻に「こんばんは」と言い続けると、少しずつ彼らの態度に変化が起きてきました。良子さんが声を掛けると、振り返る子が増え、にらみ返す子が少なくなっていったのです。
 そして、数カ月後には、良子さんのあいさつを心待ちにしていたかのように、「こんばんは!」と返事をくれるようになりました。

みんな生きてるよ

 若者たちに声を掛け始めて、半年が過ぎたある日、良子さんはいつものように、若者たちに「こんばんは」と言葉を掛けると、笑顔で応えてくれました。
 その時、思わず、「みんな、けがをしてもいいから、絶対に生きて帰ってくるんやで! おばちゃん、あんたらのこと心配やから」と、叫んでいたのです。
 その予期せぬ一言に驚いた彼らは、一斉に大きくうなずきました。
 その後も、爆音を響かせながらバイクを走らせる日々は続きました。
 それから時は過ぎ、いつの間にか彼らの姿は街角から消えました。
 ある時、良子さんは懐かしい顔と出会いました。それは、良子さんの家の前の道路にたむろしていたグループのリーダーだった青年でした。
 「おばちゃん、みんな生きてるよ。けがをして死にかけたやつもいたけど、今では、みんな成人して、まじめに働いてるんやで」
 その青年は、良子さんに笑顔で、そう話してくれました。

 この時、良子さんは、あの時の若者たちが元気で大人になってくれていることを、心の底から神様へお礼申さずにはいられませんでした。そして、神様が私を使って、「こんばんは」と言わせてくださったのだと思わせられたのです。
 あの時の「こんばんは」は、私の口を通してお出ましくださった神様のお働きにほかならなかったと、良子さんはこの体験を今も心の中で大切にしています。
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投稿日時:2010/08/19 09:04:04.269 GMT+9



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