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信心を杖に歩んだ人生 【金光新聞】

先の見えない不安な日々

 美智子さん(60)は先日、娘さん夫婦と1歳、5歳の孫の5人でグアム島に行ってきました。娘さんのご主人の勤続十年を祝って、娘さんたち夫婦が家族の思い出にと計画した旅行に、母親の美智子さんも誘ってくれたのです。美智子さんは同居している息子さんに、「海外旅行はこれが最後かもしれんから」と話すと、「何を言うてるんや。お母さんはずっと苦労してきたんやから、最後と違う。これからや」と言われ、「せっかくだから、思い切り楽しんできたらいい」と送り出されました。
 家族旅行に連れていってくれる娘さんたちや、楽しみはこれからだと言って送り出してくれる息子さんに囲まれ、美智子さんは今、幸せをかみしめています。でも、かつての彼女には、こんな日が来るとは夢にも考えられないことでした。

 美智子さんの人生は結婚を契機に大きく変わりました。結婚して1年ほどたったころ、自転車に乗っていたご主人は、突っ込んできた車にはねられて瀕死(ひんし)の重傷を負い、1カ月近く面会謝絶が続きました。この時は命をつないでもらうことができましたが、それから数年後、今度はご主人の体にがんが見つかったのです。上咽頭(いんとう)がんでした。ご主人の交通事故やがんとの闘病といった、先の見えない不安な日々が続きましたが、こうした状況の中で四人の子宝に恵まれたことは、彼女が生きていく上での大きな力となりました。
 夫婦としての生活は、ご主人の死によってわずか9年間で幕を閉じました。実はこのほかにも、ご主人の母親が若年性アルツハイマー症を患っていて、美智子さんはそのことを結婚して3日目に初めて知りました。やがて、そのお世話も美智子さんの肩にかかってきたのです。
 看病、子育て、介護などが重なり、美智子さんは自分の時間を一切持てない時期が長く続きました。「わずかな買い物の時間以外、家の外に出ることさえままなりませんでした」と、美智子さんは当時を振り返って言います。そうした先の見えない日々の中で彼女を支えたものが、親から受け継いだ金光教の信心でした。その信心ぶりは、神様にすがるというより、しがみつくと表現した方がぴったりくるほどのものだったのです。

信心の喜びをかみしめて

 そうして美智子さんは、抜き差しならない日々を信心をつえに歩み続けました。気が付けば子どもたちは皆、成人して家庭を築き、33年にわたって介護してきた義母もおととしに天命を終えました。そして、今回のグアム旅行へとつながったのです。
 さて、その旅行はというと、美智子さんは失敗ばかり。娘さんから最小限必要な英語を教えてもらい、恐る恐る一人でハンバーガーとジュースのセットを注文し、それを受け取った瞬間、できた喜びと緊張がほぐれたことからジュースをひっくり返してしまいました。娘さんたちからは笑われましたが、美智子さんはこんなにも穏やかで満ち足りた時間を過ごさせてもらえることが夢のようでもありました。

 教祖様のみ教えに、「先を楽しめ」とありますが、なかなかできることではありません。美智子さんは、「何度もくじけそうになりましたけど、その都度、神様に夢中でおすがりし、支えて頂きました」と、あらためて信心の喜びをかみしめています。
メディア 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2010/12/06 11:01:55.725 GMT+9



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