
今から20年ほど前の出来事です。
小学校入学を間近に控えていた純君の左目は、生まれつきまぶた部分の皮膚が眼球の表面に隆起して、眼球に大きなこぶができているように見える状態でした。
幸い、悪性のものではなく、視力にもたちまち影響はありませんでしたが、医師からは、「後々のことを考えると、小学生になるまでに手術をして、こぶ状の皮膚を取り除くことが最良です」と勧められました。
父親の照夫さん(当時40)は、手術への不安を拭い切れませんでしたが、これから先のことを考えると、この時期に手術を受けさせたほうがいいだろうと決心しました。
手術の前日、照夫さんは純君を連れて教会へ参拝してきました。
この時、私の夫である教会長は、全身にがんが転移し、医師から余命3ヵ月と告知を受けた身でした。教会で療養していましたが、広前に出られる状態ではありませんでした。
ところが、私が照夫さんの参拝とお届けの内容を告げると、教会長はお結界に出るといって、痛みを押して、私と、参拝していた信者さんの肩を借りてお広前に出、お結界に座りました。
「明日、手術を受けさせて頂きますので、どうぞよろしくお願いします」。照夫さんからのお届けを聞き、しばらくその場で心中祈念していた教会長が、照夫さんと純君に顔を向けた、その時でした。
「あっ!」という、照夫さんの声が広前に響きました。
その声に、私も教会長に目をやり、思わず声を上げそうになりました。なんと、先ほどまで開いていたはずの教会長の左目が、閉じられたような状態となり、まぶたの奥で眼球がくぼんでしまっているかのように、私の目には見えたのです。それは、照夫さんの目にも同じように映っていたに違いありません。
驚きを隠せない私や照夫さんをよそに、教会長は穏やかな表情で、「きっと、神様が守ってくださるから、安心して手術を受けてください」と、純君と照夫さんに優しく語り掛けました。