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進んで世のお役に立つ【金光新聞】

「やく年」は、役に立つ年

 今年1月に陽子さん(33)が参拝してきた時のことです。 陽子さんは、結婚を機に金光教にご縁を得た方で、久しぶりに家族そろっての参拝でした。
 彼女はお結界で、家族の近況などをお届けした後、「私は今年、厄年に当たるのですが、厄払いとかしなくて大丈夫でしょうか。何か悪いことが起きそうで心配です」と、不安げに尋ねてきました。
 私は陽子さんに、「この道では、「やく」とは世間でいう厄ではなく、役目の役という字を書く。「やく年」とは、役に立つ年、ということである。「大やくの年」とは、一段と大きな役に立つ年と心得て、喜び勇んで元気な心で信心せよ」という、金光教の教祖様のみ教えを紹介しました。
 その上で、「悪いことを思わずに、しっかりお役に立つ年になるようお願いしていけば、何も心配することはないですよ」と伝えました。
 すると、それまでのどこか不安げな表情が明るくなり、安堵(あんど)の笑みがこぼれました。

 私は、「お役に立つ」ということについて、彼女にまつわる昨春の出来事を思い出し、陽子さんにその話をしました。
 それは、陽子さん家族が教会に参拝してくる道中のことでした。
 陽子さんたちの前を走っていた車が、対向車線を走る車と正面衝突する事故を起こしたのです。この時、難を逃れた陽子さんたちは、すぐに110番通報しました。
 けが人が救急車で搬送される中、陽子さんたちは事故の目撃者として、警察の事情聴取を受けたそうです。その最後に陽子さんは、「何かあれば、いつでも連絡を下さい」と自ら申し出、警察官に自宅の電話番号を伝えたのでした。  
 彼女の行動は、ごく当たり前のことのようにも思えますが、陽子さんたちは自宅から教会まで、車で1時間以上かかる遠方に住んでいます。 
 場合によっては、裁判に証人として呼び出される可能性もあり、必要以上に面倒なことには関わりたくないと考えても不思議ではありません。

母親の事故から学んだこと

 実は、陽子さんのこの行動には、理由があったのです。
 その事故の数年前、彼女の母親が青信号の横断歩道を渡っていた際、車にはねられました。
 加害者は、車道は青信号だったと自分の無実を主張したそうですが、その事故を目撃した人が、歩道は青で、陽子さんの母親は悪くないと証言してくれたのでした。
 その時の感謝の気持ちから、陽子さんは自分もいつかそうした場面に出合った時には、進んでお役に立たせてもらおうと思っていたのだそうです。
 陽子さんからその道中での話を聞いて、私は「今日はとても良いことをしましたね。神様もきっと喜んでくださっていると思うよ」と、共に喜び合ったのです。
 そのことを思い出し、あの時に取った行動と気持ちを思い出して、人のお役に立つことにこれからも取り組んでほしい、と彼女に話したのです。陽子さんも、素直にうなずいてくれました。

 私たちはややもすると、他人のことなど構っていられない、あるいは自分のことで精いっぱいというところがあるかと思います。
 この時のお取次を通して、私自身、困っている人を見た時には手助けをし、少しでも世の中のお役に立たせて頂けるよう、信心の稽古をさせてもらいたいと、あらためて思わせられたのです。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(金光新聞「心に届く信心真話」2014年7月27日号掲載)


メディア 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2015/11/06 17:32:29.132 GMT+9



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