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父を許す神心におかげ【金光新聞】

父のあまりの身勝手さに

 今から35年前のある日、私(当時23)が仕事から帰宅すると、弟が突然「お父ちゃんとお母ちゃんが離婚するみたい」と言うのです。
 事情を聞くと、父がサラ金に多額の借金があることが発覚したとのこと。当時、サラ金と呼ばれていた高利貸への借金返済のための犯罪や、一家心中などがニュースになり、社会問題になっていたころでした。
 父はお酒が好きだった上に、仕事の関係で生活のリズムが不規則だったことから体調を崩し、入退院を繰り返していました。私は、父が入院するたびに、お酒を控えるように注意しましたが、全く耳を貸しませんでした。だんだんと仕事も休みがちになり、代わりに母が働いて家計を支えていました。そんな中で、父は返す当てのない借金を重ねていたのです。
 借金のことを知った母は、離婚を決意し、家を出て、親戚の家に身を寄せました。私も、父のあまりの身勝手さに愛想を尽かし、父と縁を切って、家を出ようと思いました。しかし、どこにも逃げ場のない祖母が、 「もう死にたい」と泣く姿を見て、家に踏みとどまることにしました。

 そのころ私は、毎日、教会へ参拝していたのですが、この問題については、お結界でお取次を頂けませんでした。それは、身内の恥をさらすことはできないと思い込んでいたからです。私は、心中で神様に問題の解決をお願いするしかありませんでした。しかし、祈りながらも、父のことを考えるだけで腹が立ち、家族の行く末を思うと不安に押しつぶされそうになるのです。
 ところが、数日間参拝し続ける中で、ふと、父のここまでの人生が頭をよぎりました。サラリーマンを辞め、夫婦で食堂を始めたこと。しかし、不景気のあおりを受けて店を閉め、その後は三交代制の工場で働いていたことなど、家族を養うために苦労を重ねてきたことに気付いたのです。それなのに、父に腹を立てるのは自己本位かもしれないと思えてきました。すると、父のことがかわいそうになり、許してあげようという気持ちが湧いてきたのです。

これまでのことをお届けし

 そして、私の貯金全てを、返済のために使おうと決心しました。すると、自然に足がお結界に進み、教会長先生にこれまでのことをお届けすることができました。先生は、「大変だったね」とおっしゃった後、すぐにご神前に進み、ご祈念してくださいました。私は先生のその後ろ姿に力強いものを感じ、「これでおかげが頂ける」と確信しました。
 教会を出た私は、母の元に出向き、自分の決心を伝えてこう言いました。「お父ちゃんにも、きっと神様から分け与えられた神の心があると思うから、きっと、心を改めてくれると思う。家族皆でおかげを頂こう!」それを聞いて、安心したのか、やがて母は家に戻ってきました。そして、教会長先生の祈りに支えられて、借金を無事完済することができました。

 神の心について、 金光教の教祖様は「気の毒な者を見たり難儀な者の話を聞けば、かわいそうになあ、と思うものである。神の心は、このかわいいの一心である」 とみ教えくださっています。今回、 一時は憎んでいた父に対して、「かわいそうに」 という心が現れ、それによっておかげを頂き、自分の中に宿る神様の心を実感する体験となりました。
 以来、父は心を改めて仕事に励むようになり、孫やひ孫に囲まれ、幸せな日々を送っています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」金光新聞2016年5月15日号掲載)


メディア 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2017/10/26 14:49:17.829 GMT+9



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