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これが広前のお徳か!【金光新聞】

過酷な運命を背負って

 私(49)が奉仕する教会に、洋子さん(74)がおぼつかない足取りで、 息子の健太さん(43)に手を引かれて参拝しました。
 2週間前に重度の熱中症にかかり、 食欲もなく、ほぼ寝たきりの状態だったそうです。さらに、長年の重労働による過労も重なり、足腰に激痛が走るとのことでした。
 病院で診てもらうと、「体力は徐々に戻ったとしても、足腰の痛みは長年積み重なったものだから…」と言われたそうです。
 「しんどくて、 死んでもいいと思いましたが、動けない主人(83)を置いては逝けません。先生、どうか助けてください」とお願いされます。
 一緒にご祈念をし、洋子さんに、 「お神酒を吹きましょうか?」と尋ねると、黙ってうなずいたので、一心に手を合わせている洋子さんの頭に向かって、お神酒を吹きかけました。

 私が「金光様」と唱えながら、洋子さんの手や足腰をさすっていると、洋子さんがせきを切ったように話し始めました。「私がおなかの中にいる時に両親は離婚し、私は父親の顔を知りません。しかし3年前、初めてここへお参りした夜、見知らぬ男の人が、何も言わずにほほ笑んでいる夢を見ました。すぐに、父だと直感し、金光様が会わせてくださったように思え、本当にうれしかったんです」。
 洋子さんは続けて、健太さんは実子ではなく、孤児を引き取り育てたこと、その後結婚して2人の男の子を授かった後も、実の子たちと同様に健太さんのことがかわいくて仕方がないこと、2人目を授かった直後に、夫が事故で下半身不随となり、それ以来、40年余り介護をしながら、寝る間も惜しんで3人の子どもを育ててきたこと、そして健太さんは子どものころから、父親代わりとなって弟たちの世話をし、今では父の介護もしながら、洋子さんを助けてくれていることを、話してくれました。
 さらに、健太さんは重度の糖尿病で入退院を繰り返しているばかりか、弟たちには知的障害があり、施設に身を寄せている状況だと言うのです。
 私は話を聞きながら、こんな過酷な運命を背負った家族はあるのだろうか。この先、一体どんな未来があるというのか、と思ってしまいました。

神様と氏子の願いを結ばれる場所

 しかし洋子さんは、「金光様はありがたい。その上、今日は先生の顔まで見られて、何ということか」と涙を流して感極まっています。そして突然、 健太さんに、「おい! お母ちゃんな、今、痛みが楽になってきたで! 急に身体が軽くなってきたで!」と興奮したように言い、スッと1人で立ち上がり、スタスタと歩き出したのです。
 一瞬、 あぜんとしてしまった私の心の中に、「これがお広前のお徳なのか!」との思いが込み上げてきました。そして、「氏子、 信心しておかげを受けてくれよ」との神様の願いと、 「神様、どうか助けてください」という人の願いが結ばれた瞬間を見たような思いになり、「金光様のお広前とは、まさにこれを、150年余りにわたって起こし続けてきた場所なのだ」と思えたのです。

 ご神前がとてもまぶしく、お広前が希望の光で包まれているような不思議な感覚とともに、まるで神様が「先を楽しめ」とおっしゃっているようでした。助かるのだろうかと疑いを持ってしまった私に、神様が、難儀な氏子の助かりを祈るのが私のご用なのだと教え諭してくださった瞬間でした。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」金光新聞2016年10月23日号掲載)
メディア 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2018/04/22 13:56:54.145 GMT+9



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