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親の願いが子の願いに【金光新聞】

憧れの優しい警察官

 一人息子の翔平(21)が小学校に入学して間もないころから、食事中の雑談などで何度か伝えた言葉があります。それは、「翔平が大きくなったら、世のため人のためにお役に立ってほしい」という、私たち親の願いでした。
 その後、中学生になったころから、「将来は警察官になりたい」と言うようになりました。高校生になると、部活動の厳しい練習の合間を縫って、毎日警察官採用試験の勉強に励んでいました。そして、採用試験にも無事に合格し、警察学校へと進みました。
 警察学校の卒業を1週間後に控えた日、「僕がなぜ警察官になりたいか分かる?」と、息子から聞かれました。私が「どうして?」と尋ねると、息子は「僕が小学生の時、韓国で出会った警察官のこと覚えてる?」と言いました。それは、私たち家族が観光で韓国を訪れた際のことでした。

 ソウル市内を家族で歩いていた時、乗り物好きだった翔平が、交番の前に停車しているパトカーを見つけ、「あのパトカーの前で写真を撮りたい!」と言いだしました。そこで写真を撮ろうとしていたところ、巡回から戻ってきたパトカーが、ちょうど私たちの目の前に止まりました。
 そのパトカーから制服姿の若い警察官が降りてきたので、私が拙い韓国語で「パトカーの前で写真を撮らせてもらってもいいですか?」と尋ねると、笑顔で「ああ、いいですよ」と言ってくれました。さらに 「息子と一緒に写ってもらえませんか?」とお願いすると、快く応じてくれました。
 パトカーの前に警察官と翔平の2人が並んで、私がカメラのシャッターを押そうとしたその瞬間、警察官がかぶっていた制帽を翔平の頭にポンとかぶせてくれたのです。異国での旅で緊張気味だった息子の表情が、そのさりげない優しさのおかげで満面の笑みとなり、見るからにうれしさが伝わってくる写真が撮れました。

世のため人のためにお役にたちたい

 思い返せば、中学・高校と翔平の勉強机の上には、その時の写真がずっと飾ってありました。毎日の部活動で試験勉強の時間が思うように取れず、いら立ちを隠せない時期もありましたが、この写真をいつも心の支えにしていたそうです。「将来、こういう優しさを持った警察官になって、みんなのお役に立ちたい」と。
 採用試験当日、面接で「なぜ警察官を志しましたか?」 と質問され、「幼い時から両親に、将来は世のため人のためにお役に立ってほしいと言われ、憧れだった警察官となり、両親の願いに応えたく志しました」と答えると、面接官から「面接していて初めて聞いた言葉です。大変感動しました」と言われたそうです。
 警察学校を卒業した翔平は、念願の警察官となり、日々元気に公務に励んでいます。

 あらためて思うのは、旅行中に何げなく撮った1枚の写真が、翔平の人生をここまで導いてきてくれたということです。それは、私たち親の願いに応えようとした翔平の真心を神様がご覧になり、道を付けてくださったのだと思うのです。そして、親の願いがいつしか、子の願いともなり、その願いの上に人生を歩んでくれていることをうれしく思っています。
 今年の正月、翔平は一人で教会にお参りし、これまでのお礼と1年間の公務成就のお願いをしました。ここからも親子ともども神様にお育て頂きたいと願っています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」2017年4月16日号掲載)
メディア 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2018/07/30 16:25:09.651 GMT+9



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