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元気な姿で人に安心を【金光新聞】

あの人の姿を思い出して

 4年前のある日、 私(54)は、右胸にしこりがあることに気付きました。「もしかして…」と思った瞬間、信心友達の陽子さん(66)のことが思い浮かびました。
 陽子さんはいつも明るく元気で、一緒に信心の話をしたり、教会のご用をしたりと、私にとってとても頼りになる人です。
 陽子さんはその8年前、乳がんと診断され、乳房の摘出手術を受けたのです。当時、私は「落ち込んでいるだろう」と思い、陽子さんを励まそうとお見舞いに行きました。ところが、ベッドに彼女の姿がありません。心配になり廊下に出ると、向こうから小走りでやってくる陽子さんの姿が見えました。
 陽子さんは私の顔を見るなり、「お見舞いに来てくれたの? ありがとう。今、お隣のベッドの方の食器を片付けに行っていたの。隣の方はまだベッドから下りられないから、これくらいのことはさせてもらわないと、と思って」と、いつもの明るい笑顔です。そして、「せっかく来てくれたのに、今からリハビリなのよ。しっかり腕を動かさないと、上がらなくなるらしいの」と言うのです。

 手術を受けたばかりだというのに、以前と変わらず、人のためにできることをする陽子さんの姿、体の一部を失ってしまったことを悲観せず前向きな姿に、私は驚き、信心のありがたさをあらためて思わされました。
 現在、陽子さんは、再発もなく、以前と同じように元気に教会参拝やご用をしています。
 私は胸のしこりを見つけた時、不安に取りつかれそうになりましたが、陽子さんの姿を思い出したことで、不思議と絶望的な気持ちにはなりませんでした。陽子さんのように前向きな気持ちで検査を受けようと思った私は、翌日、教会でお取次を頂き、検査を受けることができました。

元気でいるご用

 10日後、検査結果を聞きに行く前にも、夫と一緒に教会に参拝しました。先生は「神様のご用にお使い頂けるおかげを頂きましょう」と言ってくださいました。先生の言葉を聞き、私は陽子さんの姿を再び思い浮かべていました。「きっと私も彼女のように、これからも人が助かる神様のご用をさせてもらえる」と確信したのです。
 診察室に入ると、「病名は乳がんです」と告げられました。私はぼうぜんとし、医師の説明の間もどこか実感が湧かずぼんやり聞いているような感じでした。でも最後に「大丈夫ですか?」と聞かれた時、ふと朗らかな表情の陽子さんと神様が寄り添ってくれているように感じ、しっかりと笑顔で「はい。大丈夫です」と答えることができました。
 そして、「私も陽子さんのように、自分が元気でいることで、誰かを安心させてあげられたら。そうした、人が助かるご用にお使い頂きたい」。そんな願いを持って、私は手術と抗がん剤治療を受け、今こうして元気に生活ができています。

 先日、近くに住む友人に乳がんが見つかりました。その友人が、「あなたの元気な姿を見ていると、不安な気持ちが少し落ち着く」と話してくれた時、とてもありがたい思いになりました。
 とはいえ、半年ごとの検査のたび、再発や転移への不安が押し寄せてくるのも事実です。でも、そのたびに「神様のご用にお使い頂けるおかげを頂きたい」という願いを新たにしています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。

(「心に届く信心真話」2018年10月21日号掲載)
メディア 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2019/11/05 16:16:07.722 GMT+9



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