title_02.jpg

HOME › 一言から開けた救いの道【金光新聞】

一言から開けた救いの道【金光新聞】

スリランカのコロンボ空港

 長年、剣道に励んできた私(46)には、剣道の師匠がいました。師は二十年前、不慮の事故で亡くなりました。
 それから十年後、師の娘さんがスリランカの男性と結婚することになり、私は、父親役として式に出席するため、師のご家族と一緒に、スリランカへ行くことになりました。これから紹介するのは、その時の忘れられない出来事についてです。
 当時、スリランカでは民族紛争が激しさを増していました。私たちが入国する三日前には、大統領暗殺未遂テロ事件が発生し、全土に戒厳令が敷かれたのです。
 日本の外務省からは、スリランカの在留邦人に対して国外退去の指示が出される中、私たち一行は、意を決して現地に向かうことにしました。

 スリランカのコロンボ空港の外国人到着ロビーに降り立つと、私たち以外に旅客はおらず、荷物検査の台の周りには、自動小銃を携えた何人もの兵士が、にらみつけるような目をして無言で立っていました。荷物検査では、トランク内の隅々まで入念にチェックされました。
 張り詰めた空気の中で、私の番がやって来ました。この時、その場の緊張感に耐えかね、私は思わず手を合わせるや、「アイボワン」と言っていました。
 すると、室内の空気が瞬く間に変わったのです。それまでこわばっていた兵士たちの表情が、一瞬にして和らぎ、鳶色(とびいろ)の肌に白い歯を見せて笑みを浮かべ始めたのです。また、彼らの目からは敵意のような冷たさが見る見る消え、好意のまなざしへと変わっていきました。
 この「アイボワン」という語は、「こんにちは」「ありがとう」という意味を持つ、この国では相手に対して心を許し、敬意を示す大切な言葉だったのです。私は師の娘さんから事前に、この言葉だけを教えてもらっていました。


一語万金

 戒厳令下のスリランカを訪れた私たちは、兵士たちの目に、どう映ったのでしょうか。「この国の大変な状況を何も分かっていない、興味本位でやって来た観光客」ぐらいに思い、馬鹿にされているような心持ちだったのかもしれません。
 ところが、その外国人から突然、「アイボワン」という言葉が合掌と共に発せられたのです。このことが兵士たちの心に、「彼らも、何か特別の事情があって、やって来たに違いない」という思いを生み出させることになったのではないかと思うのです。

 あの時、とっさに合掌して出た言葉は、神様、師のみたま様が差し出してくださった救いの御手であり、それによって私たちのみならず、兵士たちの心をも一緒に救ってくださったのではないでしょうか。
 金光教の教祖のみ教えの中に、「広前でひそひそ話をするな。一語万金(一言が大変な価値を持つという例え)」というものがあります。
 私はスリランカでの体験から、たった一言であっても、その一言によって人はそれぞれ自分の内に頂いている「人を思う心」に目覚めることができ、和賀心(和らぎよろこぶ心)を現して、われ人共に助かることができると、実感させて頂きました。
 「一語万金」。教祖のみ教えに込められた、人を思いやり、共々に助かる生き方を求め、互いに和賀心をはぐくんでいきたいと思います。

メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2009/01/02 09:24:03.716 GMT+9



このページの先頭へ