title.jpg

HOME › 普通ならお墓の中やで【金光新聞】

普通ならお墓の中やで【金光新聞】

命にかかわる事故に遭ったことが契機に

 恵子さん(73)は、未信奉者の家庭から、金光教を信仰する家に嫁いで、間もなく半世紀を迎えます。板金業を営む夫の憲一さん(76)の仕事を手伝う傍ら、教会の行事や参拝にも熱心に取り組み、さらには、義父母の介護や介助にも献身的に取り組んできました。

 その義父母も、十数年前に相次いで他界しました。恵子さん夫婦は70歳を過ぎた今も、現役として板金業に従事し、業者仲間からは「ととかか丸」と親しみを込めて呼ばれています。

 そんな恵子さんですが、結婚当初は、熱心な信心一家に嫁いだ者としての務めという程度の教会参拝でした。

 それが結婚9年目、恵子さんが34歳の時、命にかかわる事故に遭ったことを契機に、信心への取り組みが大きく変わったのでした。

 それは、恵子さんが民家の屋根の改修工事で、雨どいを取り付ける憲一さんを手伝っていた時のことです。

 「おい、道具を持ってきてくれ」と、丸太で組まれた足場の上部に立って叫ぶ憲一さんの声に、恵子さんは道具を抱えて足場を登っていきました。その時、突然足元の丸太が折れ、恵子さんはコンクリートの地面にたたきつけられるように転落したのです。

恵子さんの腹部に手を置いて

 直ちに病院に運ばれましたが、内臓破裂の重体で脾臓(ひぞう)を摘出しました。この手術は、約20人分の血液が輸血される大掛かりなものとなりました。

 手術は成功し、恵子さんは一命を取り留めましたが、術後、発熱や肺に水がたまるなどの症状が続きました。

 そんなある日、先代教会長が恵子さんを見舞いに病院を訪れました。そして、帰る間際に、恵子さんの腹部に手を置いて、「ベッドの上でもお礼させてもらえるのやから、ご飯やお薬を頂く前には、『金光様、頂かせてもらいます。ありがとうございます』と、お礼をさせてもらいなさいや」と言ったのです。

 先代教会長が病室を後にしたのと入れ替わるように、主治医が回診に訪れました。そしてこの時、腹膜炎を併発し、危険な状態にあった恵子さんの病状に気付いたのでした。

 緊急手術を終えた恵子さんが麻酔から目覚めると、病室にいた主治医が、「あなたは一度ならず、二度までも命を拾って不思議な人や。普通やったら、とっくにお墓の中やで」と言いました。その言葉に、恵子さんは、「あの時、教会の先生が私のおなかへ、おかげを授けてくださったんだ」と直観的に思ったのです。

 気が付くと、恵子さんの枕元には、神様へのお礼と感謝の言葉を口にする義父母や憲一さんたちの姿がありました。

 「みんな、私のためにこれほど祈ってくれていた。金光様、もう一度元気な体にして頂いて、この家族のために、私をお使いください」。恵子さんは心の底から、そう願ったのでした。

 それから2カ月足らずで退院した恵子さんは、今日までの約40年間、何の後遺症もなく元気に過ごしています。

 現在、糖尿病で失明した夫の妹を介護しています。生前、義父母が気に掛けていたことだけに、恵子さんは「行き届いたお世話ができずに申し訳ないことです」と話しながら、自宅のご霊前で手を合わせるたびに、義父母のみたま様からねぎらわれ、守られているように感じてならないと言います。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。
メディア 文字 信心真話 よい話 金光新聞 

投稿日時:2009/09/18 16:22:14.607 GMT+9



このページの先頭へ