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無理と思わず願い貫く【金光新聞】

チャリティーコンサートを開催

 平成16年10月23日、新潟県中越地方を激しい地震が襲い、多くの人々が被災しました。日を追うごとに被害の深刻さが明らかになるにつれ、金光教の教師である私(42)は、「何かさせてもらいたい。私にできることは何かないだろうか」との思いが強くなっていきました。【金光新聞】

 そんなある日、所用で山口県を訪れる機会があり、以前から関心のあった童謡詩人の金子みすゞの生誕地に足を延ばしました。

 そこで、金子みすゞの詩に共感する一人のシンガー・ソングライターと出会ったことから、私の住む町で震災被災者のための義援金を募るチャリティーコンサートを開催しようということになったのです。

 とはいっても、コンサートが実現するかどうかの確たる見通しが立っていたわけではなく、半ば思い付きと成り行きから始まったことでした。

 とにかく、コンサートの実行委員会を立ち上げ、私は事務局長に就きましたが、うまくいくかどうか、不安で仕方ありませんでした。その気持ちをある先輩教師に話したところ、「願いを立てたら、8割は成就したのです。残りの2割は、情熱で乗り越えられる。決して無理と思わず、どんなことでもおかげを頂こう。それがお道の信心です」と激励されました。この言葉で、コンサートを成功させたいという漠然とした思いは、確固たる願いへと変わったのです。

 その後、年末年始を挟んだ、わずか3カ月の間に、被災地に思いを寄せる人、音楽を愛する人、金子みすゞの詩の世界に共鳴する人など、町内外の人たちが次々と協力を申し出てくれたのです。

 また、町や教育委員会、地元新聞社の後援と協賛も得ることができ、当初思いもしなかった町全体を挙げての取り組みへと発展したのです。用意した8百枚のチケットも完売し、願い以上のおかげを頂きました。

「よろしく頼みます」

 その一方、このことに没頭する私の中で、一つの迷いが生まれていました。

 「私には、教会でするべきことがほかにあるのではないか。この活動は、本当に被災者の支援になるのか。単なる私の自己満足にすぎないのではないか…」。そんな思いが、絶えず頭をよぎったのです。

 そんな中、岡山県にある金光教本部に参拝し、家族で教主金光様へお届けをした時のことです。

 チャリティーコンサートのことをお届けする夫の言葉に、金光様はじっと耳を傾けてくださいました。金光様からお言葉はありませんでしたが、私たち家族一人ひとりに温かなまなざしを向けてくださいました。この時、「よろしく頼みます」と、お声を掛けてくださったかのように思え、迷いが晴れていくのを感じました。「神様が喜んでおられる」。そう確信できたのです。

 そうして迎えたコンサート当日の開演5分前、私は、ここまでの取り組みのすべてにお礼の祈りをささげていました。

 「できることは、全てさせてもらった。後は今日の収益金を、一日も早く被災地に届けるだけ」

 ふと気が付くと、コンサート会場には、私がBGM用に編集した楽曲の中で一番好きな曲が流れていました。この時、神様が私にご褒美を下さったように感じました。

 この日、小さな町のコンサートホールは、遠く離れた被災地の人々を思う真心で埋め尽くされました。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。

メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2009/10/29 16:49:17.861 GMT+9



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