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神はすべて見ておる【金光新聞】

私をスリ扱いして言いたい放題

 それは、帰宅ラッシュで混雑する電車での出来事でした。座席に座って本を読んでいる私(33)の前に、労務者風のおじさんが立ちましたが、随分とお酒を飲んでいるようで、立っているのがやっとでした。【金光新聞】

 私が席を譲ると、おじさんは「ええ人や。席を替わってくれてありがとう」と礼を言い、うれしそうに座りました。

 ところが、しばらくして、そのおじさんが私に対して何か言っている声が耳に入ってきました。振り返ると、先ほどの穏やかな表情とは一転して、すごい形相で私をにらみつけています。

 「おまえ、ええかっこして、席を替わる時、スッたやろ!」

 私は何のことか分からず、きょとんとしていると、「わしがここに入れとった金を、替わるすきに抜き取ったやないか!」と、大声で私を怒鳴りつけました。もちろん身に覚えはなく、酔って勘違いされたと思い、相手にしなかったのですが、それをよいことに、私をスリ扱いして言いたい放題です。

 さすがに私も腹が立ち、何か言い返そうとしたその時、ふと教祖様のみ教えが頭に浮かんできたのです。

 「人が盗人じゃというても、腹を立ててはならぬ、盗みをしておらねばよし。神がよく見ておる」。私はそのみ教えを実践しようと努め、おじさんの暴言にただひたすら耐え続けました。

 三十分ぐらいたったでしょうか、電車がある駅に近づくと、おじさんは「わしは次の駅で降りるから、おまえも一緒に降りろ!」と言いました。私もいよいよ自分の潔白を証明しなければと、腹を決めました。そして、ほかの乗客に向かって、「私がこの方のお金をスッたと言われて困っています。どなたか証人として、次の駅で降りてくださる方はいませんか」と、お願いしました。

 すると、おじさんの隣りに座っていた四十過ぎの男性が手を挙げ、「私が一緒に降りましょう」と言ってくれたのです。

あなたの姿に感心しました

 降りた駅で駅員さんに事情を説明すると、すぐに警官を呼んでくれました。

 駆けつけた警官から「ほんまにこの人がお金を取ったのを見たのか。本当やったら逮捕せないかん。しかし、そうでなかったら、名誉棄損になるで」と問いただされると、おじさんはもう一度、懐を確かめました。すると腹巻きから財布が出てきて、中にはお金がしっかり入っているではありませんか。当然、私の持ち物からは、何も出てきません。途端にそれまでの剣幕はどこへやらで、「わしの思い違いかもしれん…」と、態度が一変しました。

 結局、おじさんの誤解も解け、私は警官と駅員さんにお礼を言って、一緒に降りてくれた方と電車を待つことになりました。その時、あらためてお礼を言うと、「いえ、今日は素晴らしい人に出会えました。一部始終見ていましたが、じっと辛抱して自分を押さえているあなたの姿に感心しました。私ならとても我慢できなかったでしょう」と、思いがけない言葉が返ってきたのです。

 私にしてみれば、一緒に降りてくれたことに感謝の気持ちでいっぱいだったのに、相手にそう言われてみて、はっとしました。「やっぱり神様は見ておられた」。私は大変なおかげを頂いたことに、初めて気が付いたのです。そして、「金光様ありがとうございました」と、何度も心の中でお礼を申したのでした。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。
メディア 文字 信心真話 よい話 金光新聞 

投稿日時:2009/12/03 16:00:09.583 GMT+9



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