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父母代表し謝辞の大役 【金光新聞】

出来る人はほかにもいるはずなのに…

 「卒業生の父母を代表して、謝辞を述べてもらえませんか」と、次男が通う小学校から、中山紀子さん(48)に依頼がありました。小学校でPTAの役員をしている関係から、この話が来たのだろうと想像しながら、紀子さんはとても気が重くなりました。
 というのも、近所に住んでいる紀子さんの夫の両親にいろいろと問題が起きてきて、最近ではそのことにかかりきりになっていたからでした。
 義父は身体が弱って入院療養となり、紀子さんは足が少し不自由な義母に代わって、病院に通い、義父の世話をしていたのです。その最中に、義母が突然の病で他界するという不幸が重なりました。
 「何でこんな大変な状態の私が、謝辞をしなきゃいけないの。できる人はほかにもいるはずなのに…」。不満な思いを持ちながら、紀子さんは教会に参拝し、「今のこの状態では、とても謝辞を考える余裕はありません。どうさせて頂いたらいいでしょうか」とお届けしました。

 教会の先生からは、「そういう状況だから、断るのもいいでしょうし、それでもさせて頂こうと思うのもあなた次第。どちらになっても良いことになるよう、願わせて頂きましょう」という言葉が返ってきました。「断ったらいいでしょう」という返事を期待していた紀子さんは、そのあいまいな言葉に釈然としない思いでした。
 その後も、義父の身の回りの世話や退院後の生活介護などに追われる毎日が続き、決心がつかないまま返事を先延ばしにしている間に卒業式が目前となり、もう断ることのできない時期になっていました。

やらせてもらって良かった

 紀子さんは、再び教会に参拝し、「今さら誰も代わってくれません。私は車いすのお義父さんの世話でくたくた、子どもたちからはほったらかしにされていると文句を言われるし、謝辞なんてとても書けそうにありません」と、今にも泣き出しそうな顔で話しました。
 先生はこの時、「大丈夫、書けます。お願いしていますからね」と、今度ははっきりと言われたのです。
 教会から帰宅した紀子さんの心に、少し頑張ってみようかという気持ちが起こりました。いつものように家の事などを一通り済ませた後、疲れた体で机に向かうと、それまで書こうとしても進まなかったペンがするすると動き、その夜のうちに原稿ができたのです。
 そうして迎えた卒業式当日。紀子さんは満場の参列者を前に、用意した感謝の言葉を力強く読み上げました。緊張で手足が震えましたが、ふと視線を上げると、その先に次男の姿があり、その表情は「あれは僕のお母さんだ」と誇らしげにしているように思えました。
 この時、「やらせてもらって良かった」と、紀子さんは思いました。

 卒業式が終わり、教会にお礼参拝した紀子さんの顔には、大役を終えた安堵(あんど)感と、わが子へ何か大事なものを伝えられたという達成感のようなものがにじんでいました。いろいろと悩みながらも、起きてくることを紀子さんなりに逃げずに受け止めることができたことは、ささやかな自信にもなりました。
 お義父さんの介護はもとより、これから先どんな出来事が待っているかは分かりませんが、神様とともに一つ一つ乗り越えていきたいと、紀子さんは願っています。
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2011/03/23 16:12:26.161 GMT+9



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