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子猫を迎えに来た親猫 【金光新聞】

「うちで飼って」

 息子の孝介が小学2年生、妹の真理が4歳の時のことです。孝介が、薄汚れて痩せた白い子猫を拾ってきました。
 その子猫を見て、私が一瞬嫌な顔をしたことから察したのか、孝介は目に涙を浮かべ、「助けてあげて」と訴えてきました。真理も飛んできて、「うちで飼って」と言いました。
 しかし、私たちの住んでいるところは社宅の寮で、管理上、生き物を飼ってはいけないことになっていたのです。
 私は内心、やっかいなことになった、と思いながら、まずは助けねばと、子猫に牛乳を与え、段ボールと毛布で寝場所を用意しました。翌朝、牛乳を飲み始めた子猫の世話をうれしそうにしている子どもの姿を前に、私は困りました。

 その数日前、捨て犬、捨て猫の問題を扱うテレビ番組を、私は孝介と二人で見ました。捨てられ、保健所に引き取られた犬は、所定の期間、飼い主が現れるのを待った後、殺処分されるという内容でした。孝介は、それを覚えていて、捨てられていた子猫を持ち帰ったのでしょう。
 私が、「ここは社宅で、動物は飼えないんだ。市役所か保健所…」と言いかけた途端、「絶対、嫌だ!」と言い張りました。保健所に連れていけば、子猫が殺されることが分かっていたからです。
 この時妻が、「近所の動物病院で相談してみたら」と言ってくれました。それを聞いて孝介にも笑顔が戻り、早速、妻と子どもたちは子猫を連れて病院に出掛けました。
 妻は病院から帰ると私に、「病院の先生が言うには、一番良いのは親が迎えに来ることだそうよ」と言いました。私が「親って、飼い主のこと?」と聞き返すと、「本当の猫の親」と言います。
 私はその言葉に、はっとしました。その日の朝早く、外で猫が鳴いていたのを思い出したのです。でも、その時はまだ親猫かもしれないとは考えませんでした。

「ありがとう」

 次の日の早朝にも、また猫の鳴き声がします。それも、尋常ではない鳴き方でした。その声に、「これは、拾ってきた子猫の親かもしれない」と思えてきたのです。
 そこで、子猫を段ボールに入れて外に出し、カラスに襲われないよう、子どもたちと交替で見張りながら、親が迎えに来るのを待つことにしました。
 ところが、ちょっと目を離した隙に、いなくなってしまったのです。
 真理は怒り、泣きじゃくりました。子どもたちと一時間ほど探しましたが、見つかりませんでした。孝介には、「きっと親が迎えに来たのだと思う。大丈夫」と、言葉を掛けていました。私は、猫が無事に親元に帰っているようにと、神様に祈りました。

 翌朝、私が玄関のドアを開けると、門柱のそばで、なんと、あの子猫をくわえた親らしき大きな白猫が、こちらを見ていたのです。
 私と目が合うと、ぺこりと頭を下げるしぐさをしました。まるで、「ありがとう」とお礼をしてくれているように、私には感じられたのです。
 早速、孝介に伝えると、満面に笑みを浮かべて、「良かった」と喜びました。
 私はこの出来事を通して、動物であっても、親が子を思う気持ちや親子の絆は人と変わらないことを実感させて頂きました。そして、そのことを神様が見せてくださったように思え、ありがたい気持ちになったのです。
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2011/08/18 11:06:06.550 GMT+9



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