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人間は生き通しが大切 【金光新聞】

ほら、食べんね

 50年近く熱心に信心に取り組まれている片岡優子さん(66)には、美代子さんという姉がいました。
 優子さん同様、思いやりに厚く、親に孝を尽くす美代子さんが、にわかに体調を崩し急逝されたのは、平成元年4月のことでした。享年56歳でした。
 自宅で仕えられたご葬儀に、私は通夜、告別式と参拝させて頂きました。
 高齢のご両親は、気丈に振る舞われていましたが、弔問客の一人一人に丁寧にあいさつされていた母親のユキノさん(当時87)の表情には、娘に先立たれた深い悲しみがにじんでいました。
 その後も、私は教会長の父と折々に、自宅にお参りさせて頂いていました。そんなある日のことです。
 
 美代子さんの遺影の前には、いつも料理や果物、お菓子などが供えられていました。ふと、そのご遺影が少し汚れているのに気が付きました。それからあまり日を空けずにお参りした時も、また汚れていたので、私はそのことを父に話すと、父も気が付いていて、父なりに遺族の思いを何か感じ取っていたようでした。
 私は、優子さんに遺影が汚れていることをそれとなく伝えると、次のような話をされました。
 「最初、私も何かで汚れたのかと思ってきれいに拭き取ったのですが、次にお供えに行くとまた汚れていたので、不思議に思ったんです。
 姉が好きだったおはぎをお供えした日のことです。遺影の置かれている部屋の前を通り掛かった時、母が姉の遺影に話し掛けていました。おはぎの皿を手に持って、箸で一口大に切ったおはぎを姉の口元へ持っていき、『美代子、おいしかよ。これは好きだったね。ほら、食べんね』と、そう言いながら、少し震える手で食べさせていたのです。写真ですから口に入るわけがありません。口に押し付けるようにして残った分は自分が食べ、『おいしかね、美代子』と話し掛けながら、まるで幼子に食べさせるように、何度も姉の口元に運んであげている姿を見て、胸がいっぱいになりました。
 母は、どんな思いで姉に食べさせているのだろう。親孝行で優しかった姉は、母のそんな姿をどう思っているだろう。そう考えると熱いものが込み上げて、思わず母の後ろ姿を拝みました」

人間は生き通しが大切である。

 このような生活はユキノさんが亡くなる直前まで続きました。生前同様、美代子さんに語り掛けながら、ユキノさんは美代子さんのみたま様と共に生きていかれたのだと思います。
 父親の直行さんは、娘の後を追うかのように、その年の11月、老衰で85年の生涯を終えられ、ユキノさんもそれから5年後の11月に92歳で天寿を全うされました。亡くなられた日も直前まで元気に過ごされ、安らかに眠るような最期だったそうです。そしてその日は、くしくも美代子さんの月命日でもありました。

 金光教の教祖様は、「人間は生き通しが大切である。生き通しとは死んでから後、人が拝んでくれるようになることである」と、み教えくださっています。
 優子さんは毎日、みたま様の立ち行きを祈り、月命日には欠かさず、ご両親と姉の美代子さんが生前好きだった料理などをご霊前にお供えされています。母親のユキノさんが亡くなって今年で18年、優子さんはきっと、生前の母親のようにみたま様と共に生きておられるのでしょう。




メディア 文字 金光新聞 信心真話 

投稿日時:2012/04/18 14:05:42.041 GMT+9



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