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病室が和賀心(わがこころ)の世界に【金光新聞】

「もう生きる希望も夢もありません」

 「無事にがんの治療を終えて退院しました。実は入院中、大変な神様のおかげを頂いたんです。その体験をパソコンで文章にしてもらえませんか」。先日、私のもとに、ある教会の先生(66)から、そう電話で依頼がありました。
 程なく届いた手書きの原稿には、「おかげは和賀心(わがこころ=和らぎ喜ぶ心)にあり」という、金光教祖の教えを実感させる、次のような内容が記されていました。

 私は約2カ月間、大学病院のがんセンターに入院していました。入院5日目に部屋替えがあり、同室の良夫さん(77)と共に新しい部屋に移りました。入室すると、1人の老人が肩を落とし、うなだれてベッドに座っていました。
 私たちがあいさつをすると、寅吉さん(83)というその方は、身の上をボツボツと語り始めました。10日前、進行性の肺がんで早ければ1年の命、と医師から言われたそうで、寅吉さんは「もう生きる希望も夢もありません」と言い、再びうなだれました。
 すると良夫さんがシャツをめくり上げて自分の体を見せたのです。良夫さんはこれまで、食道、胃、肺、肝臓、大腸と、がんの手術を5カ所もしていました。その手術跡を見て、寅吉さんはムクッと頭を持ち上げました。〝自分のがんは1カ所だけじゃないか〟と思い直し、希望が湧いたからでしょうか。私は大病人である良夫さんが、寅吉さんの心を助けることになった様子を見、これは神様のお導きによるものだと思いました。

「退院したらゴルフに行く」

 その後、末期がんの方が1人加わりました。私は同室の皆さんに、金光教の紋の入った「おかげ箸」と、教えが収められた「小教本」を差し上げました。箸には「食物は皆、人の命の為に天地の神の造り与え給うものぞ。何を喰(く)うにも飲むにも有り難く頂く心を忘れなよ」「体の丈夫を願え。体をつくれ。何事も体が元なり」という教祖様の教えを添えておきました。
 寅吉さんは涙を流しながら箸を持ち、本を読んでいました。これまで、食事のおかずが少ないと、お膳をひっくり返したこともあったそうです。他の2人も心静かに祈って食事をするようになり、皆「箸と本をありがとう」と言ってくれ、本当に感動しました。

 以来、明るく思いやりのある病室になり、会話も弾みました。 ある日、私の次男の嫁の母親が見舞いに来てくれました。自身もがんの父親を看護した経験があり、そっとのぞき込むように部屋に入ってきましたが、まるで花畑にいるように、明るく笑っている私たちを見て驚いた様子でした。
 翌日、「昨日は皆さまに力を頂きました。車で2時間かかる帰り道があっという間でした」とメールをもらい、4人で喜び合いました。見舞いに来た人も力を得、私たちも元気を頂きました。
 その後、寅吉さんは、余生を大切に送るようにと退院を許されました。当初「夢も希望もない」とうなだれていた寅吉さんですが、「退院したらゴルフに行く。正式に全18ホールを回る」と言い、その変わりようにびっくりしながら、私たちは笑顔でお別れしました。
 「あの部屋の4人組は楽しかったなあ。喜ばしかったなあ」と、同室の皆が感じたことです。がん病棟のような所でも、和賀心になると、力強く心楽しくありがたい生き方ができるということを身をもって感じました。
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2013/12/14 17:56:45.377 GMT+9



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