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世界を包み回すおかげ【金光新聞】

不思議な感情

 私は33歳の時、四国八十八カ所霊場を、歩いて巡礼しました。
 一人用のテントと寝袋、簡単な自炊道具などを詰めたリュックサックを背負って、約1200キロの道のりを巡拝したのです。
 金光教の教師である両親には、私が巡礼に出ることをあまり良くは思わないだろうと思い、話しませんでした。
 当時、東京で通信機の製造工場に派遣社員として勤務していた私は、来る日も来る日も製造ラインの一部となって働く中で、感謝や喜びのない無感動な生活を送っていました。そんな日常を変えたいと、その後の働き口も決めないまま、その年の末で仕事を辞めました。それからしばらくして、たまたま目にした巡礼者の記事に引かれて、この旅を思い立ったのです。

 そうして始めた巡礼も半ばを過ぎたころ、母に連絡を取らなければならない用件ができたことから、電話を入れて巡礼中であることを告げました。 
 私は、金光教ではない信仰行為をしていることを母が知ったら、きっと心配するだろうと思いました。
 ところが意外にも、母は明るい声で、「金光教の教祖様も、お遍路をされたことがあるのよ」と言ったのです。
 私は長い間、両親との気持ちのすれ違いから、親の思いや金光教の信心に背を向けていました。そうした過去が悔しさや悲しさとなって噴出し、この巡礼の間中、どうしてこんな境遇に生まれたのだろうと、人けのない山中で一人声を上げて泣いたり、逆に天地自然の息吹や道中での人の優しさに触れて喜びを感じ、神仏に手を合わせたこともありました。
 そうした感情が入り交じる中で、母から教祖様も巡礼をされていたと聞かされ、私の心に、自分の意思だけでこうして歩いているのではないという不思議な感情や、まだ知らないことがたくさんあるのかもしれないという思いが湧いてきました。

ここまで導いて頂いてきたことへの恩返し

 私は歩き始めてから約50日をかけて、八十八カ所を巡ると、その足で岡山県にある教祖様がお生まれになった地へ、初めて自ら参拝をさせてもらったのです。
 後日、教祖様の伝記などを読み、教祖様が四国を巡礼されたのは、金光教のお道開きをされる以前の33歳の時であったことを知り、それがこの時の私と同じ年齢だったことに言いようのない感慨を覚えました。
 それからもいろいろなことがあり、いよいよ行き詰まった私は、その4年後に金光教学院(金光教の教師養成機関)に入らせてもらいました。

 教祖様の教えに、「あなた方は小さいことばかり考えているが、金光大神は、世界をこの道で包み回すようなおかげがいただきたいと思っている」とあります。
 この教えに触れた時、「世界をこの道で包み回す…」ということと、喜びも苦しみもあった巡礼の日々が、私の中でどこか重なり合いました。
 「私は今、全ての出来事をおかげにして頂ける道を歩ませてもらっている。あの巡礼で流した汗や涙を受け止めてくださった天地のように、教会に参拝される氏子の声をどこまでも受け止めて聴かせてもらい、おかげにさせて頂きたい」
 現在、教会でご用させて頂いている私にとって、この願いの実践は、ここまで導いて頂いてきたことへの恩返しでもあると思っています。
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2014/08/09 08:07:09.205 GMT+9



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