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人に喜ばれる年寄りに【金光新聞】

毎月一日のお参りと家族

 私は若い時から金光教にご縁を頂き、85歳を過ぎた今も、毎月一日には必ず教会へ参拝しています。そして家族一同の先月のお礼を申し上げ、「今月も息子夫婦と孫2人と共に、それぞれご用(務め)を無事にさせて頂けますように」とお願いします。
 一方、家族は「おばあさん、今度○○があるから神様にお願いしておいて」と頼みはしますが、信心しようという気配はありません。ですが、一日の参拝時には誰かが都合をつけ、車で20分ほどかかる教会へ、私を連れていってくれます。
 ある月の一日。朝から嫁が畑へ出、大きな白菜2個と大根4本、ホウレンソウを取り入れてくれました。いつも私が自宅で取れた野菜をお供えに持って参拝するので、準備をしてくれたのですが、見ると大根の葉がありません。最近は葉を食べる人は少なく、傷んだ葉を取り除くのは面倒だろうとの心遣いから落としてあったようです。
 お供えは、神様への収穫の報告とお礼の気持ちでさせてもらおうと、私はいつも取れたままの姿で泥だけ落としていました。ですから、その大根を見た時、「用意してくれたかね。ありがとう」とお礼を言う前に、「あら、葉っぱを落としたかね。要るんだったのに」と言ってしまったのです。その時の嫁は何とも言えない表情でした。

人が喜んでくれる年寄りになるのは本当に難しい

 わが家には、教会の亡くなられた初代先生の色紙が2枚あります。菓子箱のふたをテープで縁取った自家製の色紙には、味のある字で、「よい方へとりませんか」と、「いうことはあすにまわして晴れ晴れと」と書かれています。 出がけに、ふとそれが目に入り、「そうだった。嫁は、私のお参りを覚えていて用意してくれたのに、そのよいことの方を見ずに、自分の思いと違うという方ばかりを見てしまった。せっかくの思いを受け取ってあげられなかった」と、そんな思いが湧いてきました。

 先日も、近所の同年代の人が集まった時、「田畑を若い者に譲った後も、つい口を出し、言い争いが絶えなかった」と話題になりました。私にも思い当たる節がありました。息子は息子なりに勉強して、夏の暑い日も土が凍る冬の日も汗水を流し、先祖からの畑を守って、おいしい野菜を家族に食べさせようとしています。それなのに、「そんな農薬を使ったの。なるべく使わないほうがいいのに」などと、つい責めてしまいます。これでは、息子の元気が出るはずがありません。「年を取るのは本当に難しいね」と、居合わせた人たちと顔を見合わせて苦笑いしました。

 年数がたてば、誰でも年は取ります。でも、長年の経験で身に付けたことも、相手が聞いてくれるような物の言い方、間柄ができていないと、本当に伝えたいことは相手の心に届きません。
 「いうことはあすにまわして晴れ晴れと」とは、明日に回せば、言わなくていいことは言わずに済み、言わないといけないことでも、腹立ちや不足の心ではなく、相手が受け取りやすい言葉で言える、と教えてくれているのではないでしょうか。
 「人が喜んでくれる年寄りになるのは本当に難しい」。そう思いながらも、年取ってなお、わが心を磨いていける信心を頂いていることが、ありがたくもあります。
 初代先生が色紙の向こう側から、「元気を出して信心しましょうで」と、懐かしい声を掛けてくださっているようです。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(金光新聞「心に届く信心真話」2014年8月17日号掲載)
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2015/11/28 16:12:56.921 GMT+9



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