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神 人を求め給う

金光教報 「天地」2月号 巻頭言

 以前、甥(おい)が大学に進学することになり、私に、「アパートを借りるのに保証人になってほしい」と依頼があった。二つ返事に引き受けて、早速書類に必要事項を記入し、署名押印して本人に渡した。
 1週間ほどして、「不動産屋から書類が返送されてきた」との連絡を受けたが、記入事項に不備があったのかと思い、すぐさま確認すると、なんと「宗教に関わる方は保証人になれません。他の方をお願いいたします」とのことだった。あぜんとすると同時に驚き、少なからず憤慨した。

 一方、これは30年ほど前のことになるが、当時、義兄の仕事の関係で、姉家族5人がアメリカのシカゴで暮らしていた。
 ある日、姉が私に「せっかくだから、私たちがシカゴにいる間に遊びにおいでよ」と誘ってくれた。「私は英語ができないし、一人では無理。第一入国審査が嫌だから」と断っていた。すると姉が、「大丈夫よ。目的はサイトシーイング。滞在期間はワンウィーク。これだけ覚えていれば大丈夫よ。他のことは聞かれないから」。それならば、とのことで意を決して一人渡米した。
 いよいよシカゴの空港に着陸した。徐々に緊張と不安が襲ってくる。遂に入国、審査官の前におずおずと進み出た。頭の中では、「金光様・サイトシーイング・ワンウィーク・金光様」と繰り返し唱えていた。
 ところが、審査官の質問が予定と違った。実に流ちょうな早口の英語でまくし立てられ、私に唯一聞き取れたフレーズは、最後の「ホワット・ユア・ジョブ」だけだった。「えっ、仕事? 職業?」。一瞬頭の中は真っ白になった。

 その時、以前聞いたことがある「レバランド(聖職者・教師)」という言葉を思い出した。そこで、とっさに出た言葉が「アイ・アム・レバランド・オブ・ジャパニーズ・コンコウキョウ」だった。気分はまさに、まな板の鯉。腹は据わっていた。
 すると審査官「アー・ユー・レバランド?」と、私に聞き返してきた。そこで私「イエス」と応えた。すると審査官「オーケー・ゴー・ストレイト」と言いながら、カードの上隅に英語でレバランドと書くのが見えた。
 その先の係の人にカードを渡し、誘導されるがままにドアを開けたら、迎えの姉の姿が目に入った。なんと、レバランドと言っただけで私はフリーパスだった。他の乗客は、「グリーンのラインを進め」「イエローのラインを進め」と促され、みんなスーツケースを開けての荷物検査に並んでいた。
 日本ではアパートの保証人にすらなれない宗教者。アメリカと日本とでは、社会的評価・認知度・信頼度は、かくも異なっていた。それが悔しくもあり、残念にも思うが、これがわが国の現状である。
 しかし思えば、日本の現状がそうであればあるほど、神様は、私ども以上に残念至極に思っておられるのではないだろうか。

 “神 人を求め給うこと誠に切(せつ)”。これは祖父の堀尾保治(大分・日田)が遺した言葉だが、神様に求められているのは教祖様や先人たちだけではないように思われる。「どうか一人でも多くの氏子を取次ぎ助けてやってくれ。どうか神を世に出してくれ。どうか神心となって 人を祈り 助け 導いてくれ。どうか神人の道を現してくれ」と、今なお、現代を生きる我々に、切なる願いをかけてくださっているように思えてならない。
 現代社会にあって、宗教者の、あるいは教団の、社会的評価・認知度・信頼度を高めるのは、ひとえに私たちお道の信奉者一人ひとりの信心実践にかかっている。お道のご比礼と世界人類の助かりを願い、共にここからの信心の歩みを、一層力強く進めてまいりたい。

金光教学院長 堀尾 光俊

投稿日時:2018/02/01 09:00:00.000 GMT+9



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