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耕すことから始めよう【金光新聞】

師匠への恩返しと不安のジレンマ

 信奉者家庭に生まれ育った私(58)は、23歳で仕事を辞めて金光教教師となり、お参りしていた教会に内弟子として入りました。
 その4年後に師匠から、老齢の教会長が単身でご用している教会を後継してほしい、 という話を頂きました。その教会の建物は、 築年数が古く、床は至る所が抜けそうで、お広前にはひどい雨漏りがあり、さらにお風呂は壊れて使えません。
 当時、私は結婚を考えている相手がいました。教会での生活ということ一つをとっても想像し難いのに、こんな状況を受け入れてくれるだろうかと心配になりました。本当に新しい家庭を築いていけるだろうか、という不安でいっぱいでした。とはいえ、ここまで私を導いてくださった師匠のご恩にどうしても報いたいとの強い願いも一方ではあり、私はどうすることもできずにいました。

 そんな中、ささいなことから師匠と口論になり、抱えていた不安や心配が一気にあふれ出た私は、「金光教教師を辞めさせてください。その教会に私が行ったところでどうにもならないし、後継する自信もありません」と、言い放ってしまったのです。
 それからの数日間、私は食事もろくに取らず、部屋に閉じこもり布団の中で、もんもんと思いを巡らせました。私が教師を辞めると言った時、師匠が「残念や、本当に残念。私より、金光様が、天地の親神様が一番残念に思っていらっしゃる」と、つぶやくように言われたことを何度も思い返しました。その言葉が身に染みてくるにつれ、私はご本部にお参りしたくなってきました。
 師匠から許しをもらった私は、すぐさまご本部に参拝しました。当時、本部広前のお結界には四代金光様がお座りになっていました。金光様がお座りになる広前に身を置き、自分自身を見据えながら、金光様のお取次のありのままを頂こうと思いました。

願いをもち、土を耕すことから

 そうして数時間がたった時、ある女性がお結界に進み、心配事をとうとうと話し、その解決を願い出ました。じっと耳を傾けておられた金光様は、「花を咲かすことばかり考えて心配しなさるな。今はお礼申して、土を耕す時でしょう。花は一遍に咲きません。種をまき、水をやり、お天道(てんとう)様のお照らしを頂き、そうして、初めて芽が出てきれいな花が咲くのです。それが天地の道理でしょう」と、その方に諭されました。
 そのお言葉に、私は雷に打たれたような衝撃を覚えました。まさにこの私に言われたように思えたのです。
 私は、「後継に入る教会の将来ばかりを案じて心配している。今はしっかり土を耕すことから始めるしかない。ありがたいことに、既に教会長が土を耕してくださっているではないか」と思い直すことができました。

 その後、教会後継に入り、結婚した私は、自分が幼いころから信心を育てて頂いてきた青少年の育成に取り組もうと決心し、毎月、子どものための祭典を仕えました。参拝者がない日もありましたが、願い続け、継続することで15年目にして、青少年育成のための活動を行う金光教フォーゲル隊を結成できるまでになりました。
 今年、後継者に迎えて頂いてからちょうど30年になります。今でも、四代様のあの時のお言葉を支えに、日々、土を耕し、いつかきれいな花を咲かせたいと願いながら、ご用に励んでいます。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」金光新聞2016年11月20日号掲載)
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2018/04/29 4:38:54.166 GMT+9



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