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代わりに手を合わせて【金光新聞】

気になる同僚

 和広さん(59)は、口数の少ない昔かたぎの職人さんです。生まれついての生真面目さも相まって、何事も神様にお願いしながら実意丁寧な信心を進め、仕事の上でも生活の上でも次々とおかげを頂いてきました。和広さんは、勤め先の工場や社長のこと、それぞれの立ち行きを願うようになって、一番気掛かりだったのは、長年一緒に働いてきた同僚の村田さんのことでした。
 明るく気のいい男性なのですが、早合点が多く、仕事上のミスが多いのです。そのたびに埋め合わせをする羽目になる和広さんは、たまったものではありません。このままでは会社の経営にも影響が出てしまいます。和広さんは、村田さんのミスが減りますようにと、しばらく前から願い続けていました。

 しかし、相変らず村田さんは失敗ばかり。しかも、それを気にしている様子もありません。村田さんの仕事ぶりがいっこうに改善しないことに業を煮やした和広さんは、ある日、押さえきれなくなった怒りを抱えたままで教会にお参りしてきました。お広前に入った和広さんでしたが、いつものようにお結界に来ません。
 和広さんの様子がいつもと違うことに気付いた私が声を掛けると、ようやくお結界の前に座り、こめかみに青筋を立て、「明日こそは、『ええ加減にせえよ! 俺はおまえのことをこんだけ一生懸命に願うてるのに、失敗ばっかりして』とでも、いっぺん言うたろうと思いますねん」と、切羽詰まった思いを私にぶつけました。

教祖様のご理解で

 その時、 たまたま開いていた金光教教典の 「金を貸すなら、はじめからやればよろしい」という教祖様のご理解が、ひときわ大きく目に映りました。そのご理解が和広さんに語りかけてくださるように感じた私は、このご理解を紹介し、 「お金を貸して助けるつもりなのに、返せなくなると相手を訴える。それでは助けるのではなく、苦しめるようなことだと教祖様はおっしゃる。和広さんも、助けるために祈っているはずなのに、苦しむことになっているんだよね。このみ教えは、まさに今のあなたのためのお言葉のように私には思えてね」と、話し始めました。
 「彼の失敗が減ればこんな思いをしなくても済むのにという気持ち、一生懸命お願いしているのに思いが通じないもどかしさもよく分かります。相手のことを思っているのに、自分が苦しい思いになるのはつらいよね」と。

 私は続けて「それで村田さんに具体的にどうなってほしいと思ってるの」と尋ねました。すると和広さんは、「仕事は神様に手を合わせながらするもんやと、私は思うてます。自分の使う機械の前に立ったら、『これから、仕事を始めさせてもらいます。どうぞけが過ちなく、よい仕事がさせて頂けますように』とお願いし、出来上がったらお礼を言う。彼も、せめて仕事の前に、機械に手を合わすぐらいの気になってくれたら失敗も減ると思うんです」と答えてくれました。
 「それならいっそ、あなたが彼に代わって手を合わしてあげたらどうですか? ほんとに彼になった気持ちで、どうぞ良い仕事ができますようにと神様にお願いしてはどうかな」。私がそう言うと、和広さんは肩の力が抜け、目に涙があふれてきました。「ほんまですなあ」と言う和広さんの表情は、いつもの穏やかさを取り戻していました。

(「心に届く信心真話」2017年6月25日号掲載)
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2018/09/07 14:43:53.331 GMT+9



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