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今が一番いい時ですよ【金光新聞】

信心の話をしていると

 今から十数年前のことになりますが、毎年、年の瀬にまだ幼い3人の子どもと私たち夫婦がそろって、教会にお礼参拝させてもらうのが恒例となっていました。お結界で家族皆のお届けが終わると、お広前脇のソファでお茶を頂きながら、先生夫妻、そして90歳を迎えられていた親奥さまの良子先生と一緒に信心話に花を咲かせます。
 大人たちの話に興味が持てない子どもたちは、目の前に山盛りにされたお菓子に目を輝かせ、代わる代わる手を伸ばします。そして話が終わるころには、山盛りだったお菓子がきれいになくなっているのです。幼いとはいえ、その遠慮のなさにいつも恥ずかしい思いをしていました。

 ある年の暮れ、教会のお広前に入る前に、妻が「今日はお菓子を出してくださっても、すぐに手は出さんのよ」と子どもたちに言い聞かせました。そして、家族皆で一年のお礼を済ませると、例年通り、ソファで信心話が始まりました。子どもたちの視線は時々お菓子に向かいますが、今日は辛抱しているようでした。しかし、「遠慮せずにどうぞ」と声を掛けてもらったのを合図に、今か今かと待っていた子どもの手が一斉に伸びたのでした。
 私が思わず、 「いつも遠慮がなくて済みません」とおわびすると、いつもは、にこにこと話に耳を傾けているだけの良子先生が一言、 「今が、一番いい時ですよ」と言われました。私は、「子どもたちも一年間元気に過ごし、みんなで参拝もでき、確かに今が一番いい時だなあ」と思いました。ところが、良子先生は続けて「私はいつでも、 その時その時が一番いい時と、そう思っているんですよ」とおっしゃり、こう話してくださいました。

良子先生の信心

 戦前から教会でご用をなさっていた良子先生は、戦中には夫が出征し、一人で教会を守ってきました。そして、食料や物資が十分ではない戦後の混乱期に、子どもを授かったのです。いろんな心配や不安が入り交じる中、無事に出産できた時に助産師さんから、 「今が、一番いい時ですよ」と言われたそうです。わが子を抱いたぬくもりに命の喜びと神様のありがたさを感じられたことでしょう。
 以来、何十年とその喜びを思い出すかのように、どんなことがあっても「今が、一番いい時」と自分に言い聞かせながら、今を喜んでこられたのだそうです。90歳になられても、にこやかで元気な良子先生の姿に、その人生をかけて磨いてこられた言葉なんだと感動したのを覚えています。

 今では、幼かった子どもたちも大きくなり、社会人として働いています。3人ともそれぞれの道を歩んでいますが、さまざまな問題に直面した時には、自分の願い通りになったことの方が少なかったと思います。それでも、子どもたちに「望み通りにならず、残念かもしれないが、このことを通して神様がきっと新しい世界を見せてくださると信じているよ。神様が一番いい道をつけてくださっているんだから」と話してきました。
 親子が共に心配や不安なことでもポジティブに受け止め、一つずつ目の前のことに取り組んでいけたのも、良子先生のいつでも「今が、一番いい時」という物事の捉え方を手本にできたからです。そのことを本当にありがたく思い、ご霊神様になられた良子先生にお礼を申しています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」2017年12月17日号掲載)
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2018/12/29 7:38:18.435 GMT+9



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