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平和を生み出すこころ

金光教報 「天地」7月号 巻頭言

世話になるすべてに礼をいふ心
       平和生み出すこころといはん

 四代金光様は、平和はあるものではなく、お礼を土台にした生き方によって生み出すものであると詠んでおられます。
 4月15日、パリのノートルダム大聖堂が炎上しました。850年の歴史を持ち、革命にも二つの大戦にも耐えてきた素晴らしい大聖堂です。大聖堂のあるシテ島は、セーヌ川の中洲にあるパリの起点のポイントゼロであり、パリのどこからでも尖塔が見え、世界遺産にふさわしい建物でした。
 炎上直後から、さまざまな活動が世界中で起こりました。瞬く間に募金は1千億円を超え、文化財関係者の啓発や調査も始まりました。私も日本の片隅で、できることをさせていただきたいと思い、世界中の人々が力を合わせる姿に、胸が熱くなりました。
 その大聖堂炎上の日から94年と1日前のことです。金光教の大教会所がご炎上になりました。この大教会所は先覚先師の願いと力のこもった建物でした。それが一夜にして焼けてしまったのですから、その衝撃は計り知れません。その時、

 空たかくもゆる焔をそのままに
       みちの光となすよしもがな

と高橋茂久平先生が詠まれたのに対し、返歌で

 なせばなる道の光となせばなる
       なさねばならぬ時はこのとき

と師匠である佐藤範雄先生が返されました。
 大教会所は信心の願い礼場所であると同時に文化財でもあったと思います。木曽の檜や全国からの御用材が使われ、超一流の棟梁や建築士、彫刻家の腕が振るわれた建物だったからです。さらには、建築に関わった人々が、生かされていることへのお礼を形に表したものでもあったのです。
 文化財は歴史を考える素材であり、知性と理性の原点であると言われます。また、文化財に触れることは、死者と対話をすることでもあります。その文化財が焼けた時、嘆き悲しみ、力を落とすのが普通です。しかし、このお道の先人たちは、その焔をこのお道の光となすと思われ、その言葉どおり、10月には再建途上の仮神殿で見事に教祖大祭が仕えられ、さらに信心も展開し、建物も再建されていったのです。
 四代金光様は、昭和38年8月5日、教主就任式の後で、「私たちめいめいが、さらにさらに、御取次をいただいての信心生活を進めることによって、いっそう文化人になっていくことでなければならぬと思うのであります。信心をいただいた、文化人である私どもが、文化教団として、日本の力になる、このことが、世界のお役に立つ、たいせつなことであると、願わずにはおれないのであります」とおっしゃっています。
 今の世界は、違いによる断絶や格差による他者への怒りなど負の思考が横行し、ますますそれを激しくする言動が目立ちます。そんな時代だからこそ、お金では買えない文化の力と、歴史を見る死者との対話が必要だと思います。死者と対話し、歴史を考えることが次の創造を生む文化力になるのです。
 これからの社会をどう築いていけばよいか、先人たちは道を示してくださっています。文化は実生活に信心を頂いて生きるお礼と喜びの中から、おのずと生まれてくるものだと。今こそ、お世話になる人や物にお礼を申していく生き方を、世界に示して平和に貢献したいと思います。それこそが、あいよかけよで世のお役に立つことだと思います。
(金光英子・金光図書館長)

投稿日時:2019/07/01 09:27:19.274 GMT+9



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