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今からでも神様に願い【金光新聞】

初参拝でお結界へ

 数年前の7月下旬、私(52)の奉仕する教会に、ある女性が参ってきました。
 女性は神前でしばらくご祈念した後、神妙な面持ちでお結界の前に座りました。そして、「初めまして、私は広島県から参りました竹下(48)と申します。実は4月から私
の長男の直人(18)が声優の専門学校に入学し、こちらの教会の近くのアパートに入居しているのですが…」と、そこまで話すと、下を向いたまま黙ってしまいました。
 私が「親元を離れた息子さんに会いに来られたんですね」と話し掛けると、竹下さんは突然、涙ながらに直人さんのことを話し始めたのです。
 聞くと、5月の終わりごろから直人さんとは音信不通になり、6月に直人さんのアパートを訪ねたそうです。管理人に鍵を開けてもらい部屋に入ったものの、そこに直人さんの姿はなく、アルバイト先にも連絡してみましたが、1カ月以上無断欠勤をしているとのことでした。直人さんの身を案じた竹下さんは警察に捜索願を出し、ひとまず広島へ戻ったのです。

 しかし、その後も直人さんの安否は分からないままで、再び上京してきたとのことです。「直人は今どこでどうしているんでしょう。こちらでの生活になじめなかったのか、あるいは何かの事件に巻き込まれたのでしょうか。とにかく生きていてほしい。命があるだけで十分です」と話し、泣き崩れました。
 私は「つらいですね。思い切り泣いてください。あなたの不安な気持ちを、神様は全て聞いてくださっています。きっと神様は直人さんのことを守ってくださっているはずです」とお話しし、泣き続ける竹下さんを見守りながら、神様にご祈念させて頂きました。

自ら気付き改まる

 その後、竹下さんは少し落ち着きを取り戻すと、自身の身の上を話し始めました。「私の母は熱心な金光教の信者で、私も幼い頃は母と一緒に教会へお参りしていました。しかし、次第に母から『お参りしなさい』と言われると、何か強要されているようで教会参拝が嫌になりました。結婚後は母とも疎遠になり、20年以上会っていません」。さらに話を聞くと竹下さんに
は、直人さんの上に2人の娘がいるものの、姉妹の仲がとても悪く、いつもけんかばかりで困っていて、その後も娘さんが摂食障害になるなど、何かと娘さんのサポートに追われていたそうです。
 竹下さんは続けて「だから直人は私に余計な心配を掛けないように、ずっと自分の感情を押し込めていたんでしょう。早く気が付けばよかったのですが、今からでも神様に家族の幸せと助かりを願っていけるよう、一度母に会ってこれまでのことを聞いてもらおうと思います」と言い、自らの生き方に何か気付きと改まりを感じた様子で、教会を後にしました。

 その後も、私は毎日直人さんの無事を祈っていました。
 1カ月がたち、竹下さんから、直人さんが青森県内でホームレスの状態で見つかったとの連絡がありました。竹下さんは電話口で「直人が生きていてくれて、本当にありがたいです。母ともやりとりができるようになりました」と、涙ながらに神様へのお礼を述べていました。
 神様との綱は決して切れることはありません。ここからも竹下さんが神様に心を向けた生き方を進め、直人さんをはじめ家族一人一人が立ち行くよう、私も日々祈りを込めています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」2018年6月17日号掲載)
メディア 文字 金光新聞 信心真話 

投稿日時:2019/07/29 09:00:34.581 GMT+9



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