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私も誰かの力になれる【金光新聞】

次々と病気がみつかり

 私がご用している教会にお参りしている真希さん(38)は、幼少の頃、病気で左耳が聞こえなくなりました。
 小学校に上がると、同級生からいじめを受けるようになりました。ある日、「私なんか生きている価値がない。死にたい」と、母親に打ち明けたところ、「生きる価値のない人間なんていない。でも、どうしてもつらいなら、お母さんも一緒に死ぬよ」という言葉で救われたことがあったといいます。
 けれども、「前を向いて生きていこう」と、決意した真希さんを待っていたのは壮絶な人生でした。10代で卵巣が腫れ、腎臓の炎症を併発し、2度も卵巣のう腫の手術を受けました。さらに、33歳で子宮筋腫と乳がんが見つかり、度重なる手術に加え、つらい抗がん剤治療と闘う日々でした。
 やっとの思いで回復したかと思うと、今度は腸閉塞(へいそく)で入院。心身共に疲れ果てていた真希さんは、病院の医師から「手術するしかない」と言われ、「これ以上つらい思いをするのなら、今度こそ死にたい…」と、すっかり気力を無くしてしまいました。

 意気消沈して病棟を歩いていた時のこと。真希さんは一人の女性が、暗い表情で廊下の椅子に腰掛けているのを目にしました。思わず「どうしたのですか?」と声を掛けると、女性は、ぽつりと「もうすぐ受ける乳がんの手術が怖くて」と、言うのです。
 その言葉を聞いて真希さんは、自然と口が開いていました。「実は、私も同じ手術を受けたことがあるんですよ。不安もあったけど、受けられてよかった。だからあなたもきっと大丈夫」
 それを聞いた女性は驚いた表情で、「あなたはまだ若いのにどうしてそんなに落ち着いているの?」と尋ねたそうです。
 真希さんは少し考えて「もしかしたら、親から『つらい時は神様にお願いしなさい』と教えられてきたからかも。『神様、助けてください』と、お願いしたら怖くなくなるのかもしれませんね」と、笑って答えました。すると女性は「あなたと話せて心が軽くなったわ。ありがとう」と、明るい笑顔を見せてくれました。

お役に立つことが生きる力

 翌日、真希さんは手術前の検査を受けたところ、なんと患部が奇跡的に回復していることが分かり、手術は中止になりました。
 退院後、教会にお参りしてきた真希さんは、その女性との出会いを話してくれました。「その方の担当看護師さんからも『勇気を与えてくれてありがとう』と言われてハッとしたんです。『あ、私も誰かの力になれるんだ』って。『神様や多くの人から祈られ、助けられてきたことに、あらためて感謝して、その方の手術の成功を祈り、自分も神様にお願いして、もう一度前向きな気持ちで手術を受けよう』って気になったら、全快のおかげを頂いたんです。これからは皆にたくさん恩返ししていきたいな」

 私はそんな真希さんの姿を通して、お役に立つことが生きる力になったこともありがたく感じましたが、何より、神様は母親や看護師さんの言葉、女性との出会いと、真希さんの心を助けるため、さまざまにお働きくださったのだと感じました。つらい時、苦しい時、 私たちはつい、祈られていることを忘れ、目の前のことに必死になってしまいますが、どんな時も神様は寄り添ってくださっているのです。
 真希さんが今日も、神様と共に生きていけますように。祈っています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。

(「心に届く信心真話」2019年1月20日号掲載)

メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2020/01/16 11:15:12.316 GMT+9



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