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母が願ってくれたから【金光新聞】

実は相談があるんですが…

 私は息子の通う高校でPTA会長のお役を頂いています。ある日の役員会で、帰り際に役員さんと談笑していると、山下さんという女性から「会長さんは金光教の先生をされているんですよね」と話し掛けられました。
 会長を引き受けた時のあいさつで、私は金光教の教師であると自己紹介していました。山下さんはそのことを覚えていてくださったようで、「嫁ぎ先の祖父母が、隣町の教会にお参りしていたようで、自宅に金光教のご神前があるんですよ。これもご縁かなって思って…。実は相談があるんです」と言うのです。
 先日、山下さんの最愛の母親が病に倒れて亡くなり、悲嘆に暮れて帰郷したそうです。その際に昔からそりが合わなかった父親とささいなことで口論になり、「二度と帰ってくるな!」という父親の言葉に「二度と帰るもんか!」と返し、けんか別れで故郷を後にしたということでした。
 「そんなことがあって、最近気分が重いんです。こんな時、金光教ではどのように教えているのですか?」と、真剣な表情で尋ねられました。

 私が、「金光教の教祖様は『生きても死にても天と地はわが住みか』と教えてくださっています。お母さんはあなたのそばに寄り添いながら、お父さんと仲直りし、また里帰りできることを祈っていると思いますよ。自宅にご神前があるのなら、神様にお願いされたらどうですか。神様がイメージしにくければ、お母さんを思い出しながらでもいいですよ」と伝えると、表情が少し明るくなり「そうしてみます」と言って帰っていきました。以来、私も日々のご祈念で彼女のことを神様に祈るようになりました。

覚悟を決めて

 それから数カ月がたち、委員会の終了後に山下さんがやって来て、その後に起こったことを話してくれました。あれから山下さんは、時間がある時にはご神前に向かい、亡き母親に語り掛けるように、事態が好転するよう、祈っていたそうです。
 ところが数週間前、山下さんは車で自損事故を起こしてしまい、多額の修理費が必要になってしまったのです。ちょうど夫が再就職したばかりで、経済的な蓄えはなく、周囲にお金を融通してもらえる当てもありませんでした。こうなったら、けんか別れをした父親に頭を下げて頼むしかないと思い、山下さんは自宅のご神前で必死にお願いをした後、覚悟を決めて、父親に電話をかけました。父親は黙って話を聞いてくれた上で、「おまえや周りは誰もけがをしていないんだろ?だったらよかったじゃないか。お金はこちらで払ってあげるから、何も心配するな」と言ってくれ、山下さんも「ありがとう」と、素直にお礼が言えたというのです。
 罵倒されるに違いないと思っていた父親の言葉は、まるで母親のみたま様が言わせたとしか思えなかったと山下さんは言います。そして、「会長さんがおっしゃっていたことが、本当に実感できました」とうれしそうに話してくれました。

 私は「それは、お母さんが神様に願ってくださったからだと思いますよ。おかげを頂いたお礼を神様とお母さんにしっかり申しましょうね」と話し、心の中で神様にお礼を申し上げました。
 山下さんは、神様とみたま様の働きを確かに感じたと言います。私は、この体験が山下さんの信心につながっていくように願っています。
※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」2019年2月24日号掲載)
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2020/05/02 07:25:06.540 GMT+9



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