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全てお繰り合わせの中【金光新聞】

ある信徒の歩み

 私(75)は、ご神前で目を閉じたまま、ある信徒のこれまでの歩みを振り返って、しみじみとありがたい思いになり、神様にお礼を申し上げました。
 私がご用する教会に幼い頃からよく参拝していた里美さん(60)は、今年、還暦を迎えました。
 里美さんには兄と妹がいて、二人には障害がありました。そのことで、幼い頃から里美さんは、世間の偏見にさらされ、時には心ない言動に傷つけられることもありました。また家庭では、母親は障害がある二人の世話に忙しく、母親に甘えたい時にも甘えられませんでした。そんな寂しさからか、いつもどこか暗い表情をしていました。
 里美さんが教会に来るたび、温かく迎え入れ、「つらい気持ちは神様にお供えして帰ったらいいよ」と語り掛けました。彼女なりにそうしていったのでしょう。小学校を卒業する頃には少しずつ明るい表情を見せてくれるようになりました。

 その後、高校を無事卒業した里美さんは、保育士を目指して県外の専門学校に進みました。学校からほど近かったこともあり、親教会に下宿し、通学できるおかげを頂きました。
 この2年間の経験は、里美さんにとって信心の宝となりました。親教会の先生方にお世話になったご恩を何とかお返ししたいという気持ちが、その後の信心の原動力となったのです。
 保育士として地元で勤め始めた里美さんでしたが、結婚して子どもを3人授かりながらも、夫の事情により離婚し、シングルマザーとなりました。その後も職場の都合で保育士から訪問介護員への転職を余儀なくされました。里美さんは、そうした人生の大きな転機を、教会に参拝してお取次を頂くことで乗り越えていきました。特に、介護員への転職では、お取次を頂く中で、障害のある兄と妹が福祉施設でお世話になってきた恩返しになればと思い分けて、決心できたのです。

お繰り合わせをいただいて

 今から4年前、施設にいた妹が体調を崩して入院することになりました。その6年前に母親が亡くなっていたこともあり、里美さんはずっと離れて過ごしていた妹のために、仕事が終わると病院に通い、付き添いました。
 数カ月後、妹が亡くなりました。葬儀は教会で、家族だけで行うつもりでしたが、妹の施設の職員が30人以上会葬してくれ、施設での思い出なども聞かせてもらい、和やかな雰囲気の中で見送ることができました。
 そして昨年3月、認知症を患い、里美さんが手厚く介護していた父親が93歳で、さらにその3カ月後には兄が60歳でと、相次いで亡くなりました。里美さんは3人の子どもの力を借りながら、それぞれ心を込めて葬儀を出しました。

 10年という間に、両親ときょうだいを次から次へと失った悲しみと寂しさがあった一方で、里美さんが現役で働いていて収入のあるうちに、子どもたちの協力も得て、つつがなく、最期を見送ることができたことは、全て神様のお繰り合わせを頂いてのことだったとありがたく思っています。
 還暦を迎える里美さんは、間もなく定年となります。ここまで生活できてきたお礼の思いも込め、これからは嘱託として継続して勤めていきたいという願いがあります。里美さんがこれまで頂いてきた数々のおかげにお礼を申しつつ、今日も里美さん家族が信心で立ち行くおかげを頂けるよう、祈っています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

(「心に届く信心真話」2019年3月3日号掲載)
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2020/05/04 06:09:10.108 GMT+9



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