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できることを精一杯に【金光新聞】

覚悟が決まると

 3年前、平成28年4月16日未明、 私(当時23) は激しい揺れで目を覚ましました。熊本地震です。2日前に起きた震度7の地震に続く大きな揺れに、部屋の家財道具はことごとく倒れ、とても生活できる状態ではありませんでした。
 そんな中、私が一番心配だったのは、就職したばかりの職場のことでした。私の職場は、女性の社長が経営する和菓子専門店で、私の郷里の福岡県にある商業施設での新店舗出店が間近に迫り、準備に追われているさなかだったのです。
 夜が明け、職場に向かうと、案の定、設備や道具が散乱し、電気、ガス、水道は全て止まっていて、従業員は皆、ぼうぜんと立ち尽くすばかりでした。住む所も無く、仕事も先が見えないばかりか、「また地震が来たら…」という恐怖で、私たちの心は不安でいっぱいになっていたのです。

 そんな時、金光教の教会でご用をしている両親から電話がありました。両親は離れて暮らす私を心配して「けがはない? 何かあったらすぐに言いなさい」と声を掛けてくれましたが、続けて、「今、自分にできることを精いっぱいさせてもらいなさい」と言いました。正直、私は心のどこかで「帰っておいで」という言葉を待っていたのですが、両親がそのことを口にしなかったおかげで、私の覚悟が決まりました。
 私は不安を吹き飛ばすように「ここまで皆で頑張ってきたんだ。お世話になっている社長のためにも、なんとかしよう」と、決意しました。先輩従業員にも協力を求め、もう一度皆で出店を目指すことになりました。
 被災後、私は避難所で生活していましたが、偶然、熊本県内に住んでいる友人に再会し、「こっちは電気が通ったから」と、友人宅に身を置かせてもらえることになりました。また、地震が起こる直前に、熊本の大学に進学したばかりの弟が、毎日お店の復興に協力してくれ、姉も福岡から私の職場に必要な物資を提供してくれました。
 おかげで、一時は諦めかけていた出店を実現することができました。

神様に守られてのお互い

 振り返ると、この時の出来事は私に多くのことを教えてくれました。以前は「お祝い事に関わるケーキやお菓子を作る仕事ができて、なんて幸せなんだろう」と思っていましたが、そのこと以上に、誰かの喜びにつながり、人のお役に立てるということが、何よりの幸せで、ありがたいことなのだと思えるようになりました。 さらにあの時、弟の大学進学、友人との再会など、どれも偶然だと思っていました。しかし、全ては神様が私を守ろう、助けようと、用意してくださっていたことだったのかもしれません。
 「帰っておいで」と言わなかった両親も、ひたすら神様に私の立ち行きをお願いしてくれていたと知りました。また、両親や祖父母は私がまだ幼い頃から、教会ご用の中で、私にもできることを任せてくれていました。そのことも今回、私の中で力になったのだと思っています。

 まさに、 目に見えることだけでなく、目には見えない働き、関わりある人たちの祈りや思いに包まれてお育てを頂いてきた私でした。これからは私自身が「神様に守られての私」と実感できたように、一人でも多くの人に「神様に守られてのあなた」ということを伝えていきたいです。
 そして、全国の被災地の方々に一日も早く安心が訪れますよう、祈り続けています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

「心に届く信心真話」2019年4月21日号掲載
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2020/05/18 08:29:01.990 GMT+9



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