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誰かの祈りに包まれて【金光新聞】

不安を受けいれてもらった

 金光教を知らなかった私(68)が、「人のことを心から祈れるようになりたい」と願うようになったのは、私もまた祈られていることを知ったからでした。
 私は23歳の時、会社の先輩だった夫と結婚しました。夫の家は金光教を信仰していて、初めて一緒に教会へお参りした時、教会の先生方が温かく迎えてくれ、私たちの結婚をとても喜んでくださいました。
 その後、教会のお祭り前の大掃除に行った時には、義母が信者さんたちに私を紹介してくれました。すると、皆さんのお名前を聞く間もなく雑巾がポーンと飛んできて、「あなたは窓拭きを頼むわね」と言われ、皆てきぱきと掃除に取り掛かり始めたのです。私はその姿に思わず、すがすがしい気持ちになりました。
 先生も信者さんも優しく親しみやすい方ばかりで、いつも笑い声が絶えない教会の和やかな雰囲気に、金光教という宗教に対する不安はすっかりなくなっていました。
 また、特に心強かったのは年齢の近い教会の奥さまの存在でした。当時、何も分からなかった私に信心のこと、教会のこと、子育てのことなど、いろいろな話をしてくれ、教会ご用も丁寧に楽しく教えてくださり、本当に助けられました。

 私が53歳の時のことです。体調が優れず、検査を受けると、肺がんが見つかりました。これからのことを思うと胸が詰まり、私は奥さまに不安な気持ちを打ち明けました。すると「大丈夫。お願いしてるから絶対に治るよ」と、はっきり言い切られたのです。その言葉で安心して手術に臨むことができ、2週間ほどの入院で回復させて頂きました。
 実は、私のがんが見つかる1年ほど前、奥さまも血液の難病で入院されていました。8カ月の入院の後に教会に戻られ、車椅子生活にはなりましたが、以前と変わらぬ明るさで、皆の心の支えとなってくださいました。
 ところが、私の入院中に奥さまの病気が再発し、そのまま亡くなられてしまったのです。教会の明かりが一つ消えたように思え、本当につらく悲しくなりました。

冊子を開くと

 1年後、奥さまの1年祭が仕えられ、奥さまの生前の面影をしのぶ冊子を頂きました。そこには、多くの写真があり、そのどれをとっても奥さまの懐かしい笑顔がありました。さらにページをめくると、闘病中の日記があり、その最後の内容を読んだ時、私は涙が止まらなくなってしまいました。
 「再入院しましたが、今度のほうが重いように感じます。『なんとしてもおかげを頂きたい』と神様にお願いしていますが、それでももし、回復が難しい時は、信徒の人で病気を抱えている方、私と同じように入院しておられる方の病気を私に背負わせてください。そして、その人たちの病気が良くなりますように」
 奥さまは、ご自分が重い病気と闘っていながらも、私たちのことをこれほどまでに祈り、願ってくださっていたのです。その事実に、私は何とも言い表せないほどの思いが込み上げ、言葉になりませんでした。

 今思うのは、私はいつも誰かの祈りや優しさに包まれていたということです。それらは目には見えませんが、その見えない思いに、私はずっと支えられていました。信心のある家庭に嫁ぎ、自分ではない誰かに思いを掛けられる人に出会わせて頂いた私もまた、誰かの心を救える人になりたいと願っています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています

「心に届く信心真話」2019年10月20日号掲載
メディア 文字 信心真話 金光新聞 

投稿日時:2020/11/25 09:24:56.836 GMT+9



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