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神様へのお礼を形に現す大切さ【金光新聞】

おかげ頂き喜ぶ息子

 一人息子の陸が小学6年生の時、私は45歳で、亡き夫の後を継いで教会長となりました。当時、教会の生計は厳しく、陸が欲しがっていた物も、すぐに買ってやれません。数カ月かけて、やっと買い求めることができた時は、「神様のおかげで」という感謝の気持ちと、「早く陸の喜ぶ顔が見たい」という親心で、走るようにして帰りました。
 陸に「神様にお礼を申しなさいよ」と言って品物を手渡すと、陸は「うわあ!」と驚き、手に取って目を輝かせています。息子の表情に、親として無上の幸せを感じるとともに、神様も、全ての人間を、わが子をいとおしむように見守ってくださっているのだと思えてなりませんでした。
 その日の夜、ご神前の掃除をしようとした時、ふと「そうだ、陸にも手伝わせよう」と思いました。私は常々、お守りくださっておられる神様へのお礼を、形に現すことを心掛けていました。掃除を通して、陸にそのことを伝えたかったのです。
 私は陸を呼んで、「お広前を掃きなさい」と言いました。すると陸は、「なんだ、そんなことか。あとからする」と言って、奥へ引っ込んでしまったのです。

繰り返す怒りと後悔

 私はあきれて、物が言えませんでした。「自分の願いがかなったらそれで終わり?神様へのお礼をないがしろにするなんて…。この横着者!」と、心の中で叫びました。一方で、「今の心の声を神様がお聞きになったら、どう思われるだろうか」と、感情的になった自分を後悔しました。そのうち、陸が「やっぱり掃除する」と言って出てきそうな気がして待っていましたが、とうとう出てきませんでした。
 掃除が終わり、部屋に戻ると、陸は買ってもらった品々をうれしそうに眺めています。その姿を見ると、「親の思いも知らないで」と再び腹が立ち、「全部返しなさい!」と取り上げてしまいました。陸はあっけにとられてポカンとしています。
 私は、腹を立てたままお風呂に入りましたが、「せっかく買ってあげられたのに、こんなことになって…。今、あの子は何を考えているだろうか。掃除をしなさいと言わなかったらよかっただろうか」と悩み、涙が出て仕方がありません。

本当に幸せになる道

 その時、夫が亡くなる前、私に言った言葉を思い出したのです。「おまえたちは、神様を使おう使おうとしているが、わしは神様から使われよう、使われようと思うておるのぞ」
 私は、「やっぱり、信心もここが大切だなあ」と再確認しました。「おかげを頂きたいと神様にお願いしても、大切なのはおかげを頂いた後なんだ。自分の思いを満たすことだけを考えていては、陸のように、神様から何もかも取り上げられてしまうかもしれない。自分の願いがかなったなら、次は、神様へのせめてものお礼を祈りや行いで現し、お役に立たせて頂くことが、本当に幸せになる道なんだ」と。
 そう思いながらお風呂から上がると、陸が「お母さん、ごめんなさい」と謝ってきました。私はびっくりして、慌てる心を落ち着かせ、「あなたのおかげで、お母さんも信心の大切なところに気付かせてもらったよ」と言って、再び陸に品物を渡し、喜び合いました。
 親の立場から子を見ていると、神様のみ心に触れる思いがします。神様のみ心を悟り、神様に喜んで頂ける私でありたいと、しみじみ思う出来事でした。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。

「心に届く信心真話」2021年7月25日号掲載

メディア 文字 金光新聞 信心真話 

投稿日時:2022/08/14 10:00:32.636 GMT+9



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