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神様に喜ばれるお金の使い方を【金光新聞】

言われるままお金を

 4年前に91歳で亡くなった祖母は、生前、いろいろなことを教えてくれました。私(44)が大学生だった頃に聞かせてくれた話は、特に印象深く、心に残っています。
 金光教の教師だった祖母が祖父と結婚し、家族と共に教会で暮らしていた頃のこと。ある日、台所で昼食の支度をしていると、勝手口に見知らぬ男の人が現れ、「奥さん、お金を貸してくれ」と頼まれたそうです。
 聞けば、近くの炭鉱で働いている人で、遠方に残してきた家族が病気になり、今日中に帰りたいけれど、汽車賃がないということでした。
 祖母は、気の毒に思いましたが、教会では参拝者がお供えされたお金や品物を神様からのお下がりとして頂いて生活をしており、決して経済的に余裕があるわけではありませんでした。それでも、困っているその人を前にした祖母は、家計が不足する分は工夫してやりくりしようと決心し、必要な額をその人に渡したのでした。
 男性が去って程なく、義父である教会長から、「さっき人が訪ねてきたようだったが、誰か」と尋ねられ、祖母がいきさつを話すと、「それは、だまされたなあ。今頃、飲み代になっとるかもしれんよ」と言われました。
 当時は、炭鉱が閉山し始め、町では仕事を失った人たちが昼間からお酒を飲む姿を目にすることがあり、もしかしたら、お酒を買う金欲しさにうそをついていたのかもしれない、と言うのです。これを聞いた祖母は、エプロンを着けたまま勝手口から飛び出し、駅に向かって走りました。

「申し訳が…」の一心

 息を切らして駅に着くと、「奥さーん、奥さーん」と声がしました。ホームを見ると、先ほどの男の人が、切符を持った手を大きく挙げながら、「奥さん、ありがとう、ありがとう」と叫び、列車に乗っていったのだそうです。
 「それを見た時は、まあ、ほっとして…」と語る祖母は、何十年も前のことを話しているとは思えない、うれしそうな笑顔を浮かべていました。
 私はその表情を見て安堵しつつ、その後、教会長が何と言ったのかが気になり、「間に合って本当に良かったね。ひいおじいさんに伝えたら、何と言われたの?」と聞きました。
 すると祖母は、「さあ、それはどうだったかしら…。私はただ、神様からのお下がりで預かっていたお金が、そういう使われ方をしては、神様に申し訳が立たないと思って。もし、うそだったらお金は絶対に返してもらわないと、という一心で追い掛けて走ったのよ」と言いました。

思し召しに沿う姿勢

 祖母の答えを聞いて、私は目からうろこが落ちたような気持ちになりました。
 祖母は、教会長の反応などは問題にもしておらず、自分がお金を渡したことが、人の助かりを願っておられる神様のおぼしめしに沿っていたかどうかが問題だったのです。だから祖母は、ホームで手を振る姿を見て、男性の話が事実だったと安心し、神様に申し訳ないことにはならず、人が助かったことが、とてもうれしかったのでした。
 お金は、使い方によっては、人が助かることにも、苦しむことにもなります。だからこそ、神様のおぼしめしに沿おうとする姿勢が大切なのだと、祖母の話を聞いて気付かされました。
 品物を購入する時も、貸し借りについても、神様に喜ばれるようなお金の使い方をしたいと、祖母の笑顔を思い出しながら日々心掛けています。

※このお話は実話をもとに執筆されたものですが、登場人物は仮名を原則としています。

「心に届く信心真話」2021年11月14日号掲載

メディア 文字 金光新聞 信心真話 

投稿日時:2022/12/23 10:00:47.691 GMT+9



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