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問題を認知して救いの手を【金光新聞】

子どもの心に深い傷残す「面前DV」

 配偶者や恋人など親密な関係にある、または過去に親密であった者から振るわれる暴力、いわゆるドメスティック・バイオレンス(DV)という言葉が知られるようになって久しい。DVや虐待のない家庭を築く上で重要なのは、「面前DV」の問題性を認知し、解決に向けた取り組みを進めていくことにある。

 1991年、「女の心とからだについて学び、支え、育ちあう場づくり」を願って、女性5人で「ウィメンズセンター岡山」を立ち上げ、電話や面接での相談などを行ってきた。2000年からは、公立の男女共同参画推進センターで、同様の業務に携わり、夫婦間DVや離婚、世代間葛藤、職場でのセクハラ・パワハラなど、主に女性たちの相談に向き合っている。
 皆さんは、「面前DV」という言葉をご存じだろうか。これは、親が子どもの目の前で配偶者などに暴力を振るうことであり、近年、児童への心理的虐待として認知されるようになった。日本では、2000年に「児童虐待の防止等に関する法律」、2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(通称「DV防止法」)が制定された後、2004年の法改正で「面前DV」の項目が付け加えられている。
 DVは配偶者間などの当事者に限らず、その現場を見て育つ子どもの心にも深い傷を残し、世代を超えて連鎖する可能性が指摘されるようになった。

 面前DVについて理解を深めるための教材として、ノルウェーでの実話に基づいてつくられた絵本『パパと怒り鬼─話してごらん、だれかに』と、この絵本を基に制作されたアニメ映画『パパ、ママをぶたないで』がある。
 物語の主人公であるボイ少年は、父親の暴力におびえながら、「自分がいい子じゃないから」と思い込み、誰にも言えずじっと辛抱して日々暮らしていた。ある日、ボイが仲良しの犬にその秘密を打ち明けたところ、王様に手紙を書くように勧められる。鳥たちの励ましもあって、「王さま、パパがママをぶちます。ぼくが悪いのでしょうか?」と書いて手紙を出した。
 すると翌朝、王様がボイの家を訪れてこう言った。「ボイ、よく書いてくれた。君は悪くないよ」。そして、父親には、「あなたの中の怒り鬼(負の感情)と向き合い、友達になりなさい。バラバラの自分(の心)をまとめ、癒やさなければ、穏やかにも幸せにもなれない」と説き、治療を受けるよう勧める。
 暴力は、加害者の側に非があるにもかかわらず、被害者が恥の感情や自責の念を持たされ、自尊感情を深く傷つけられたまま孤立してしまう。「あなたは悪くない。誰かに話して助けを求めて!」というメッセージがこの物語には込められている。被害者に寄り添い、温かい関わりと情報を提供してくれる「犬」や「鳥」(周囲の人々)、安全な環境と自尊感情を回復させ、勇気づけてくれる「王さま」(支援者)のような存在が欠かせない。また、加害者も刑罰を受けるだけでなく、安全な場所で「怒り鬼」と向き合い、それまでに受けた心の傷を癒やし、暴力の連鎖を断ち切れるよう、適切なケアを受ける必要がある。

 金光教祖は「信心は家内に不和のなきがもとなり」と教えられた。DVや虐待は、力の差を不適切に行使する暴力や支配だ。DVや虐待はあなたのすぐ近くでも起きている可能性がある。家族、親族、友人、知人、近所の人、教会の先生や信徒、誰か一人でもいい。被害を受けている人に気付き、手を差し伸べられる人となってほしい。

市場 恵子(社会心理学講師・カウンセラー)
(「フラッシュナウ」金光新聞2018年2月4日号掲載)

 

投稿日時:2018/02/05 09:00:00.000 GMT+9



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