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「地域と関わり一人を楽しむ」

増え続ける「おひとりさま」の高齢者

 厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、2017年の一人暮らしの高齢者数は推計627万人で、10年前の約1・5倍となった。長寿命化が進み、いわゆる「おひとりさま」の高齢者が増え続けているが、「おひとりさま」と「孤独」は、決して同じ意味ではないことを知っておいてほしい。

 孤独死した人の部屋の原状回復(清掃・消毒)や遺品整理を行う、特殊清掃業者に関する報道に触れる機会が増えた。今の時代ならではの仕事だと思う。2014年に内閣府が行った「一人暮らし高齢者に関する意識調査結果」では、一人暮らしの高齢者の7割以上が「今のまま一人暮らしでよい」と答え、現在の生活に一定の満足感をお持ちのようだ。「お寂しい」「お気の毒」というより、むしろ「お気楽」で「楽しい」老後を過ごしている人が多いということだろうか。
 社会学者の上野千鶴子さんの著書『「おひとりさま」の老後』(2007年/法研)は、出版後まもなく大ベストセラーになった。配偶者がいてもいなくても、長生きすれば最後はみんな一人。一人で老い、心置きなく死ぬための知恵とスキルを、上野さんはその後も「おひとりさま」シリーズで考察・提案し続けている。
 昨年、NHKで放映されたドキュメンタリー番組「さびない鍬(くわ)でありたい─97歳 おひとりさまを生きる」で紹介された石井哲代さんの生活は、大きな反響を呼んだようだ。痛い足を引きずりながらも農作業にいそしみ、家の中の段差や障害物を「自分を鍛えてくれると思えばありがたい」と前向きに受け止め、石井さんは一人暮らしを続ける。その一方で、積極的に地域の人々と関わりを持ち、周囲に見守られながら孤独とは無縁の生活を送る。石井さんには、高齢の「おひとりさま」が抱えがちなさまざまな不安はないようだ。

 私の職場の近くに、社会福祉法人が運営する食堂がある。この食堂では、障がいを持つ若者たちが平日のランチタイムにお客の注文を聞き、お膳を運んだり下げたりしながら、生き生きと働いている。私は、日替わりランチを楽しみに通う開店以来の常連だ。
 その店の大きめのテーブルには、近所に住む70〜90代の女性たちが三々五々集まってきては、ほぼ毎日、おしゃべりしながら食事を楽しんでいる。私は彼女たちからお話を伺ったり、お菓子や漬物のお裾分けを頂いたりと親しく交流させて頂いている。彼女たちのほぼ全員が一人暮らし。配偶者に先立たれ、子や孫とは別々に暮らす「おひとりさま」である。しばらくお顔を見ない人がいると、
「東京の娘さんの所」「風邪をひかれて」と、不在の理由をお仲間が教えてくださる。
 「楽しい」老後とは、一人で気楽に過ごす時間とともに、地域の人たちとの関わりを築くことが重要だと感じる。 公民館などに集まって、合唱や手芸を楽しんだり、囲碁や将棋に興じたり、はたまた、小中学生の登下校の見守りボランティア活動など、体が動くうちは、「今日、用(教養)がある」「今日、行く(教育)ところがある」と、さまざまな人たちと交流していくことが欠かせない。

「おひとりさま」の老後に金光教の教会はどのように関わっていけるのだろうか。信奉者については、教会参拝を通して「おひとりさま」の老後に関与してきたし、これからもそうだろうが、今後は未信奉者に対しても門戸を開いてもらえたらと思う。例えば、現在、「子ども食堂」活動が各地に広がっているが、「子ども食堂」など、お広前や台所を地域に開かれた活動に提供し、高齢者をはじめ、さまざまな世代が交流できる場にしてみてはいかがだろうか

市場 恵子(社会心理学講師・カウンセラー)

投稿日時:2018/08/20 15:58:52.075 GMT+9



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