title.jpg

HOME › 経験の積み重ねが道を開く【金光新聞】

経験の積み重ねが道を開く【金光新聞】

決断の連続の中で

 私たちは日々の生活の中で、朝、目覚めてから一日の仕事を終えて休む時まで、一つ一つ決断を迫られながら生きている。お昼に何を食べようかという判断も、就職や転職、結婚といった大きな決断も、時々刻々と選択と決断を繰り返す中でのこと。それらの決断は、これまで積み重ねてきた過去の経験と密接に関わっている。

 人は生まれてからの道のりで、毎日なにがしかの体験と経験を積み重ねて歩んできている。その経験の中には、何でも消せる消しゴムがあるのならば消してしまいたいような失敗体験や、思い出すだけで笑みがこぼれるような成功体験もある。そうした記憶は、悲しい、苦しい、楽しい、うれしい、痛いなどの感情も伴うが、その感じ方は人それぞれに違う。
 例えば、多くの人が人生の中で経験したことがある遠足や運動会についても、楽しい思い出のある人もいれば、悲しい思いをした人もいる。その時の楽しさや悲しさは、その経験の内容によっても違うし、感じ方の度合いによっても全く違ってくる。そのような自らの体験の積み重ねを振り返ると、これからの行動の選択基準が見えてくる。
 成功を願って進んだ道が、その願いとは違う方向へ行くことがある。その時、過去の失敗経験に引きずられて心が折れて沈んでしまうこともあるし、次こそは成功に近づけようと奮起し、心機一転、立ち直れることもある。いずれにしても、過去の経験値次第で、今後の選択方法がプラスなものとなり、人生の歩み方、生き方が変わってくるものである。

 振り返ってみると、私は人生における大きな転機を2度乗り越えてきた。
 一つ目は高校1年生の時、私は祖父の願い通りに家業を継ごうと決心し、経理について学ぶために商業高校に入学した。しかしその矢先、父親が3代目として経営していた家業である会社が倒産してしまった。そのために進路が大きく変わり、卒業後、父親が希望する地方銀行に入行することになった。当時の私に選択の余地はなかった。
 二つ目の大きな転機は、46歳の時、28年間勤務してきた銀行を退職して、キャリアコンサルタントの道へ進んだことである。これは私自身の決断で選択した道だった。全く別の業種への転職だったが、行員時代の28年間、人生経験と社会経験を積み、組織の仕組みを知った。さらに、社員教育を受けて知識や情報を得、行動範囲が広がり、人脈やネットワークの構築もできた。そのようなさまざまな経験の積み重ねがあり、大きな決断を下せたのである。
 家業の倒産により銀行員となる道が開け、さらにキャリアコンサルタントとなる道が開けた。これまで経験してきたことが肥やしとなり、現在も宝物として大いに役立っている。もし、何事もなく家業を継いでいたら、どのような人生になっていたのであろうか。

 そして、人生のさまざまな決断を支えてくれたのがお取次を頂くという経験だった。もともと金光教を信奉する家に生まれた私だが、自ら進んでお取次を頂くようになったのは、30代半ばのことだった。以来、何か目標を立て、方向性を定めた時にはお結界でお届けし、願い通りに事柄が進むようお願いするようになった。お取次の経験を重ねていく中で、たとえその通りに物事が進まなくても、「全て神様のお計らいがあってのこと。何があっても大丈夫」と確信できるようになった。そうした経験の積み重ねがあって、転職という大きな決断を下せたのだと思っている。
 人生の中で下してきたさまざまな選択の善しあしは、その人の人生が終わる時に分かる。「私の人生は良かった」と思える最期を迎えるために、これまでの経験を振り返り、さらにここからの経験を積み重ねていくことが大切だと思っている。

中谷智美(キャリアコンサルタント)
「フラッシュナウ」金光新聞2019年2月24日号掲載

投稿日時:2019/02/27 10:26:56.107 GMT+9



このページの先頭へ